瀬戸内と笠利市場統合

瀬戸内市場と笠利市場の統合により、今年1月から「奄美大島家畜市場」(旧笠利市場)で子牛セリが行われている

「奄美大島家畜市場」に 子牛セリ
瀬戸内町からの運送費、町が助成
頭数増で競争力 価格上がりやすく

 JAあまみ大島事業本部は、瀬戸内町の瀬戸内市場と奄美市笠利町の笠利市場を統合、笠利市場を「奄美大島家畜市場」に改称し今年の1月セリから、子牛セリを行っている。瀬戸内市場でのセリ市頭数減少、施設の老朽化、県外からも訪れる購買者の移動負担などが背景にあり、瀬戸内町の生産者の笠利町までの運送費負担については町が独自の助成で支援している。

 奄美大島内での家畜市場を運営している同本部によると、奄美群島のJA7組織が合併しJAあまみが誕生した2006年以前から統合が取り上げられていたが、新型コロナウイルス感染拡大も引き金となり具体的に動き出した。

 奄美群島から子牛を購入し肥育する購買者は県本土だけでなく熊本など近隣県、さらに兵庫や大阪などからも訪れる。奄美大島の場合、瀬戸内と笠利の二つの会場でセリ市が開催されてきたことから、購買者は前日入りし奄美市名瀬に宿泊、翌日にホテルを出発してまず瀬戸内市場(所要時間1時間)へ、セリ終了後に再び移動(同2時間)し笠利市場へ向かい、セリ市を済ませた後、空路、喜界島へ移動していた。子牛生産農家の高齢化などから瀬戸内市場では年々、入場頭数が減少。最近では瀬戸内市場で50頭前後、笠利市場で100頭前後(1日平均200頭前後)のセリ頭数となり、購買者の中には移動の負担や頭数から笠利市場のみで購入するなど「奄美大島1会場」の要望が挙がっていた。また、瀬戸内市場は約30年前に建築と老朽化が進み、施設内も狭く、セリ時は子牛と購買者との間隔もなく安全な市場運営が懸念されていた。

 新型コロナ感染が表面化した2020年2月に行われた3月セリ市では頭数が50頭を下回り38頭の購買となるとともに、島外から移動後に2カ所に分散することで感染拡大への警戒が強まり、両市場を統合し1カ所開催の方向で進むことになった。多額の事業費を伴う新たな家畜市場開設ではなく既存の施設を活用、昨年1月のセリでは笠利市場のみでの開催を試みるなど運営方法の準備に取り組み、統合手続きを経て今年1月のセリから正式に一本化された。奄美大島家畜市場に改称された笠利市場は、統合で頭数が200頭まで増えることから係留場を増床(拡張)している。

 市場統合により購買者は移動の負担が軽減されるが、運送会社に委託して笠利町まで子牛を運ぶ瀬戸内町の生産者の負担(横持費用)が増す。これについては瀬戸内町が今年度から助成に乗り出しており、町農林課によると子牛1頭当たり5千円の運送費に対し、3分の2(3300円)を助成、生産者の負担軽減を図っている。

 JAあまみ経済課は「セリ市での頭数が多いと競争力により価格が上がりやすいだけに、全体的なセリ値上昇で生産者にとってメリットとなる。また、利便性向上により購買者が瀬戸内町の子牛を購入しやすくなったのも同町の生産者にとってメリットではないか」と指摘している。