人間国宝による「夢の二人展」

「雪景」を前に笑顔の2代目・泉二啓太さん(右)と泉二弘明社長(左)

北村武資さん

 

森口邦彦さん

究極の合作「雪景」の生地(顔写真と共に、銀座もとじ提供)

【東京】銀座で大島紬の専門店を展開する「銀座もとじ」(泉二(もとじ)弘明社長)が、20世紀が生んだ日本染織界における巨匠の二人展を初めて実現した。織りと染めの「奇跡の競演」は、着物業界を超えて美術界などからも注目を集めそうだ。19日から27日まで「銀座もとじ『和織・和染』」(中央区銀座4-8-12)で開催される。

「競演する織と染-北村武資と森口邦彦」と題した二人展は、共に京都市生まれ在住の重要文化財保持者(人間国宝)によるもの。北村武資さん(86)は、史上初めて二つの技法で1995年、2000年に人間国宝に認定された「不世出の織り人」。一方の森口邦彦さん(80)は、「友禅の最高峰」と称される人間国宝(07年に認定)で20年には、文化功労者にも選定されている。作品は美術館に並び、海外でも高い評価の二人だが競演はなかった。きっかけは2019年の森口さんの、銀座もとじでの初個展。応援に駆け付けた北村さんを招いての会席で、次の目標を問われた弘明社長が「二人展を開催すること」と答えたことだった。

北村さんは「自分が織って森口さんが染めるのはどうか」と提案、その瞬間「社長は『ありがとうございます』と頭を下げていました」(2代目・泉二啓太さん)という。弘明社長は「そのような畏れ多いことは、私からはとてもお願いできない。このチャンスを逃せないと思った」と千載一遇の絆を笑顔で振り返る。

作品「雪景」は、北村さんの織り「経錦(たてにしき)」と、森口さんの「蒔糊(まきのり)」など、卓越した技術と技法が究められた女性用友禅訪問着。光の加減で、異なる色彩を堪能できる。弘明社長は「互いを認め合ってこそ出来上がった傑作。これを機に着物業界、そして多くの皆さまが元気になってほしい」と二人展に期待を込めている。