嘉徳護岸工事へ着手

護岸建設工事を巡り一時、騒然となった嘉徳海岸現場

「強行、許せない」
住民らは反対の抗議

 県は22日、瀬戸内町嘉徳海岸の浸食対策事業として進める護岸建設工事に向け、同海岸入口の歩道整備に着手した。整備が実施される同海岸前では、見直しを求める反対派の住民ら約20人が抗議の声を上げた。現場では一時、対話を模索する住民と工事関係者らが混乱。多くの警察官が集まるなど騒然とした。

 14日の着手予定も、住民の抗議もありいったんは中止。歩道整備は、現場に向かう取り付け道路の整備に伴うもので、海岸に向かうための歩行者通路を確保するもの。海岸前では午前9時ごろから、資材の搬入が再開された。

 住民らは作業とともに集まって、現場前に詰め掛けた。「強行は許せない」「住民との議論が積み重なっていない」「公開質問に回答してから始めるべき」などと抗議し、県側も「確定していることで、集落からの要望もある」「(今のままでは)危険な状況には変わりない」と必要性を訴えた。現場では一時、「危機を感じた」として警察への通報もあったが、この日は歩道確保のためのフェンス移設など、工事が進められた。

 奄美の森と川と海岸を守る会のジョンマーク高木代表は「住民の合意形成がないまま進めても、(護岸工事が)世界自然遺産条約に反する可能性が高い。一度でいいから協議の場を設けるべき」と主張。県大島支庁瀬戸内事務所の用皆弘太建設課長は「浸食の事実はあり、行政として住民の安全を守る義務もある。説得はしながら、検討委員会の整備方針に沿って進めたい」と述べた。

 嘉徳海岸は2014年の台風で砂浜が大きく浸食。畑や小屋が流失し約1700平方㍍の民有地が消失したとして、県は砂浜に長さ180㍍のコンクリート護岸の整備を計画。一部住民は「砂浜は戻ってきている」として工事の公金差し止め訴訟を起こしている。