要約筆記と合わせて耳マークグッズなどをアピールするあまみ難聴者中途失聴者協会の伊集院会長(左)と上野事務局長
3月3日は耳の日―。耳の不自由な人の支援に取り組む「あまみ難聴者中途失聴者協会」(通称・あまなん)の活動が4年目を迎えている。手書きや筆談、パソコンで難聴者に言葉を伝える「要約筆記」の普及・啓発へ地道な活動が行われる一方で、認知度はまだまだ低く利用者数は低調だ。伊集院美代子会長は「難聴者は話題についていけず、孤独感を感じることもある。聴覚障がい者がいること、要約筆記などを知ることで、受け入れる社会が広がってほしい」と願う。
「きょうは要約筆記者のサポートで、先生が話す内容を文字でも伝えていきます」―。会議室前方のスクリーンに次々と手書きの文字が映される。昨年に奄美市で行われたある総会での様子だ。発言があると、参加者の視線はスクリーンに集中。書き出されていく話し言葉を追い、深くうなずいていた。
要約筆記は、聴覚障がいのある人に代わり、話し言葉や講話内容などをその場で文字に起こして伝える。奄美市に登録する要約筆記者は15人。利用は有料の派遣形式で、会議や催しに加え、通院や役所での手続き、冠婚葬祭などあらゆる場面で難聴者らを支援・サポートする。
同協会は2018年に設立。耳の不自由な人への配慮を表す「耳マーク」の浸透とあわせて、メンバー20人が活動に携わる。だが、今年度(4月~2月末時点)奄美市の要約筆記の利用件数は8件。上野郁代事務局長は「手話と比べて利用は少なく、周知と知名度向上が課題だ」と話す。
聴覚障がい者は見た目ではわからず、理解を得られない場合が多い。特に高齢で難聴や中途失聴になった人にとって、手話を使いこなすのは難しい場合もあり、円滑に情報を伝える手段として要約筆記は欠かせない。また、近年はコロナ禍の影響でマスクをする人が増えた。口元が読み取れず、コミュニケーションを阻害するケースも出ている。
昨年は、耳マークグッズや手作りの筆談ボードを公共施設に配布するなど、周知に努めてきた。伊集院会長は「要約筆記や耳マークなど、大勢の理解が深まることで難聴者は外に出て行きやすくなる」と強調。「耳マークや筆談ボードを見かけた時は、関心を持つきっかけにしてほしい。我々もあきらめず要約筆記が役立てるよう普及・啓発に励みたい」と話した。
要約筆記派遣などに関する問い合わせは、奄美市電話0997―52―1111(保健福祉部福祉政策課まで)。