3月定例県議会は3日、引き続き一般質問があり、同日は向井俊夫議員=自民党、奄美市区=、福司山宣介議員=県民連合、鹿児島市・鹿児島郡区=、中村正人議員=自民党、霧島市・姶良郡区=、宝来良治議員=自民党、鹿児島市・鹿児島郡区=が登壇。向井議員が、奄美群島振興開発特別措置法(奄振法)が2023年度末(24年3月末)に期限を迎える中、県の取り組みをただした。塩田康一知事は答弁で、法延長に向けて新年度に総合調査を実施することを説明し、「鹿児島の宝である奄美群島の更なる振興のために法の延長は不可欠であり、引き続き地元市町村と一体となって法延長の実現に向け最大限の努力をする」との決意を示した。
知事の答弁によると総合調査において、奄美群島の社会、経済の現状・課題および奄振事業の成果などを総合的に調査分析するとともに、今後の振興開発の方向性・方策を明らかにしていく方針で、県議会や公募などによる意見を踏まえた上で22年度末(23年3月末)までに報告書を作成。その後、奄美群島の振興開発に関する重要事項を調査審議する国の奄美群島振興開発審議会に提出される。
現在、奄美群島12市町村において法改正を見据えて新たな成長戦略ビジョンの策定が進められている。総合政策部の房村正博地域政策総括監は骨子案を報告。それによると農林水産業、ものづくり、観光交流、情報通信業を「稼ぐ4分野」として、教育・人材確保・定住促進などの人、再生可能エネルギー導入などのエネルギー、情報通信インフラやデジタル技術の活用などデジタルを「支える基盤3分野」として位置づけることが検討されている。
奄振交付金について向井議員は21年度予算執行状況、奄美大島・徳之島世界自然遺産登録を契機としての予算化を質問。房村総括監は「必要に応じて事業間流用を行っている」とした上で、21年度予算では新型コロナウイルス感染症の影響を受けた航路航空路運賃軽減事業、出荷量の減が見込まれる農林水産物等輸送コスト支援事業で国費ベース計約3億9200万円の減額が見込まれると説明。これを活用し世界自然遺産登録を契機としたプロモーションや市町村などが実施する観光施設、営農用ハウス、防災関連施設などの整備費支援で事業間流用、3月補正予算に計上されているとした。
登録を契機としての奄振交付金予算化について、房村総括監は「奄美の自然の保全管理の継続的な実施に向けて保護上重要な地域における利用ルールを運用するほか、希少種のロードキル対策などに取り組むとともに普及啓発を図るため、登録1周年記念シンポジウムを開催する」と述べた。奄美群島広域事務組合が実施する群島内の周遊を促進するための旅行商品造成事業や、市町村が実施する自然や伝統文化、特産品など地域資源を生かした観光施設の整備についても予算化により支援していく。
新年度予算編成に関しては、向井議員は2年余りに及ぶコロナ禍により「最悪の状況まで深刻な影響を受けている」観光関連産業に対しての「稼ぐ力」の予算配分を質問。悦田克己観光・文化スポーツ部長は答弁で、▽大きく落ち込んでいる旅行需要を喚起する旅行割引「今こそ鹿児島の旅第2弾」の延長や県版「Go To トラベル」の実施▽国内外からの誘客を図るため観光客のニーズや消費にかかるマーケティング調査結果に基づくデータを客観的に分析し、ニーズに的確な対応で誘客▽インバウンドの再開を見据えて新たな滞在型観光コンテンツの充実やプロモーション展開▽観光業界だけでなく幅広い関係者が連携し稼げる観光地域づくりを推進するためのDMO等の組織づくりや人材育成等の体制整備▽多様化する観光形態や目的に対応するワーケーションなど新規事業に取り組むための観光事業者への支援―などを挙げた。