センバツ出場の大高野球部

2日にあった壮行会。全校生徒を前に、大会への決意を新たにした野球部の選手たち

奄美市、補助金1千万円支給
応援含む250人対象「金額以上の効果期待」

 大島高校が出場する第94回選抜高校野球大会が18日に開幕する。同校は大会5日目の22日、第2試合に出場する。選手たちの活躍を今から楽しみにしている群島民も多いだろう。一方で、今回の同校出場に対し、奄美市が独自に1千万円の補助金を支出することが、大きな話題となっている。8年前の初出場時と同額の補助金だが、一部からは「全国大会に出場しているのは野球部だけではない」「野球だけに大金を出すのはおかしい」といった意見も耳にする。今回、1千万円の補助決定の経緯を取材した。

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 市教育委員会は、今回の1千万円の支援について、市内の小中学生が全国大会などへ出場する際に費用の一部を助成する制度「奄美市各種スポーツ競技大会出場補助金交付要綱」を基に支出を決定した。

 要綱では補助金の対象者について、小学生と中学生のほか、「市長が必要と認めたもの」との項目がある。今回の補助金は、この「市長が必要」の項目に該当する。補助額については、旅費の2分の1、全国大会は1人当たり4万円を上限額としている。

 今回は、この補助金の対象を選手や監督など野球部関係者約40人のほか、球場で応援する吹奏楽部や応援団など総勢約200人にも適用。1人4万円の250人分に相当する1千万円の補助を決定した。

 一方で、市教委が選手や応援団の派遣にかかる費用を独自に試算した結果、1回戦が開幕初日に行われ、敗退した最短の場合でも約2200万円かかることが分かった。チームが勝ち進み、大会最終日の30日まで残った場合は、その2倍以上となる5000万円を超えるという試算もある。

 市教委スポーツ推進課は「対象者の選定や補助金額については、さまざまな意見があるのは承知している」としたうえで、「甲子園は、出場する選手だけでなく、応援席を含めた球場全体が全国大会の舞台のようなもの。実際に、8年前は試合では敗れたものの、応援が最優秀賞に選ばれた実績もある」と話し理解を求めた。

 大会規模そのものが大きいことを考えると、1千万円という補助額がそれほど高額ともいえない現状がうかがえる。

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 2014年に21世紀枠で初出場した際、市は、新聞やテレビ、雑誌などが同校や奄美大島を取り上げることで、約4億5千万円の広告効果があると試算した。当時、市企画調整課長としてこの試算を行った東美佐夫副市長は「テレビでの放送時間や新聞の紙面枠などを基に、広告料などから割り出した額で、実際の直接的、間接的波及効果はさらに大きい」と話す。

 今回、昨秋の九州大会で準優勝し、実力での甲子園出場を獲得したことに、東副市長は「マスコミの注目度は、前回とは比べものにならない。島の高校でも夢をかなえられることを証明した選手たちの姿は、島の子どもたちの大きな希望となった。それは、経済効果以上のものがある。夢を実現した選手たちを応援するのは、市として当然では」と話し、1千万円の補助金支出への理解を求めた。

 補助金には、ふるさと納税による寄付金が充てられた。市によると、同校のセンバツ出場決定後、同校の応援を目的とした寄付に関する問い合わせも増えているという。市教委は「出身者や群島民ら多くの人が、野球部のセンバツ出場を喜んでいる。島民を元気づける精神的な効果を考慮すると、金額以上の効果が期待できる」としている。

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 市教委は、今回の補助金に関する議論を機に、交付要綱を見直し、対象を高校生まで拡大、九州や全国で活躍する子どもたちを支援する方針を固めた。新年度からの運用を予定しており、市教委スポーツ推進課は「インターハイなどに出場する選手たちにも適用したい」としている。

 奄美を代表して全国の舞台を目指す選手たちをサポートできる環境を、島民みんなでつくっていきたい。

(赤井孝和)