50年ぶりの奄美を楽しむ―新婚旅行の地―

奄美旅行を終えて奄美新聞社を訪れた野中保子さん(左)茂美さん(右)と、榮和郎乗務員(前)

東京、野中さん夫妻 遠い記憶をたどる旅

「金婚式と誕生日を兼ねて50年ぶりの奄美を楽しんだ」と喜ぶのは、東京都町田市から観光に来た野中茂美さん(81)・保子さん(80)夫妻―。12日、久しぶりの奄美大島の自然を満喫した二人は、「やっぱり来てよかった」「50年前の記憶はあいまいだが、あやまる岬から見た真っ青な海の景色だけはよみがえった」と満足気。

「来てよかった」

佐賀県出身の夫・茂美さんと福岡県出身の妻・保子さんは、1971年1月30日に結婚。新婚旅行で奄美大島と徳之島を訪れた。昨年、金婚式を迎えた夫婦は奄美旅行を企画したが、コロナ禍のため断念した。

保子さんは「どうしても奄美大島に来たかった」と、夫・茂美さへの思いを話す。現在、車いすに乗りがんと闘病中の茂美さんは、4年前に認知症を患った。「夫(茂美さん)のいい刺激になれば」と保子さんの誕生日(4月11日)に合わせ、50年ぶりに奄美大島の地を踏んだ。

「とにかく半世紀前に1度来ただけなので、どこを観光したのかなど全く覚えていない」と笑う保子さん。茂美さんの記憶を頼りに、奄美大島巡りが始まった。

案内した奄美市笠利町の三井タクシー乗務員・榮和郎さん(69)は奄美市内を回った後、龍郷町の荒波地区や笠利町の海岸などを案内。「あやまる岬からの風景を、二人で長いあいだ眺めていた」と振り返る。

「あの風景と景色だけは鮮明に覚えている」「自然も素晴らしいが、出会った人たち全員の優しさに感動した」いう保子さんの横で、茂美さんも静かにほほ笑んだ。

50年前の遠い記憶をたどる奄美の旅を終え、二人は13日に東京へと帰る。