奄美市新設の「世界自然遺産課」

奄美市に新設された世界自然遺産課の執務室で、業務にあたる職員ら。受付カウンターには世界自然遺産関連の資料などが設置されている

希少種保護や遺産活用推進
遺産政策係と自然保護係の10人体制

奄美市は新年度の組織改正で、新たに「世界自然遺産課」を設置した。昨年年7月に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が世界自然遺産に登録されたことを受け、希少動植物の保護や外来種種駆除などの環境保全の取り組みや、民間団体および島内自治体との連携などの業務体制を強化。世界自然遺産に関連した情報発信や環境対策などを一元的に推進することで、世界自然遺産登録の波及効果などによる地域振興も図っていく。

同課は、これまで世界遺産登録申請に向けた調整などを行っていたプロジェクト推進課内の「世界自然遺産推進室」と、環境対策課が行っていた希少種保護や野生化したノネコやノヤギ対策などの業務を統合した。職員は平田博行課長ら10人で、遺産政策係(4人)と自然環境係(5人)の2係がある。

執務室は本庁舎3階の紬観光課と環境対策課の間にあるが、新設されたばかりのため、案内板などの設置はこれからという。受付のカウンターに世界自然遺産関連のパンフレットなどを置き、市民にPRしている。

世界自然遺産登録に沸く奄美大島だが、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関であるIUCN(国際自然保護連合)の勧告では、アマミノクロウサギのロードキル対策などが求められており、野生化したノネコやノヤギ、希少種の盗掘・盗採などへの対策強化なども課題となっている。

希少種保護や外来種対策などの業務を担当する自然環境係の中村幸浩補佐兼係長は「これまでの取り組みをさらに強化するとともに、地域住民の自然保護への意識を高められるよう啓発活動などに取り組んでいきたい」と意気込みを語った。

遺産政策係は世界自然遺産を活用した公民連携協議会の設立などに取り組む。河野裕二主幹兼係長は「公民連携のプラットホームを立ち上げ、さまざまな立場の人が世界自然遺産を活用した取り組みを議論できる仕組みをまず作っていきたい」と抱負を語った。

今年7月には同市住用町のマングローブパーク隣接地に環境省の「奄美大島世界遺産センター」がオープン予定。運営をめぐる国や県、島内5市町村との連携調整も課題となる。

平田課長は「5市町村で策定した奄美大島生物多様性地域戦略を基に、貴重な自然環境の保全を、一体的に推進していく。世界遺産センターの価値がしっかり発揮できるよう、関係機関との連携も心掛けていきたい」と話した。