衰弱して漂着したクジラを海へ帰す住民ら(安木屋場海岸)
自力で沖へ泳げないクジラを誘導する興克樹会長
龍郷町安木屋場の海岸で16日朝、コビレゴンドウ(ゴンドウクジラ属)が弱った状態で漂着したのが発見された。クジラは住民らの救助活動によりいったん海に放たれたが、その後再び砂浜に流れ着き、死亡が確認された。また救助活動中に産んだとされる雌の赤ちゃんも死亡が確認された。奄美海洋生物研究会の興克樹会長は「衰弱した個体が台風のうねりの影響で流れ着いたのだろう」と推測。2頭の死骸は17日に解剖し、死因などが調査される。
漂着したクジラは体長約3・5㍍の雌の成体。午前7時20分ごろ、奄美市名瀬の㈱しまバスの運転手・興一志さん(65)が海岸に打ち上げられたクジラらしきものを発見。知らせを受けた住民と大島地区消防本部龍郷消防分署の職員ら、約10人が約1㌧の個体を押して海に帰した。弱っているクジラは自力で沖に行くことが出来ず、興会長らが海に入り沖へと誘導した。
また救助活動中の海中で、クジラは145㌢の赤ちゃんを出産。出産後の死亡か死産かは不明。
興会長は、「弱ってはいたが、まだ生きた状態だったので住民らと協力して海に帰したが、残念ながら消波ブロックなどにぶつかり力尽きて死亡した。住民の懸命な救助活動には心から感謝している」と述べた。
一緒に救助活動をした阿世知正博区長(70)は「自分の知る限りこの海岸での漂着は初めて。死亡したのは残念だが、住民らの一体となった救助活動に感銘した」と話した。
奄美大島での今年の鯨類の漂着は、2月6日の奄美市笠利町の用海岸近くでザトウクジラ、同月9日宇検村平田のスジイルカに続き3度目。またコビレゴンドウの漂着は2018年5月4日、大和村津名久海岸に雄の個体が漂着して以来、2度目。
興会長によると、イカを主食とするコビレゴンドウは通常、沖合約10㌔、水深800㍍から1000㍍付近で生息し、海岸付近での発見はまれだという。雄の成体で約5㍍、メスが約4㍍まで成長する。