旅行者参加の環境保全活動を支援

希少な動植物が生息、生物多様性を育む奄美大島の照葉樹の森

奄美市奄振交付金活用 持続可能な観光メニュー提案を

奄美市は2022年度の新規事業で、環境保全と観光振興の両立を図ることなどを目的に、旅行者に外来種駆除や海岸清掃などを体験してもらう「つなぐ未来へ 奄美観光×環境保全促進事業」を実施する。奄美群島振興交付金を活用した事業で、人口減少などにより環境保全に必要なマンパワーが不足するなか、観光客らに奄美の自然を体験してもらいながら環境を守る担い手になってもらう。観光業者などにとっても企業のイメージアップにつながることが期待でき、「地域」「旅行者」「事業者」の互恵関係を築くことで、持続可能な奄美観光の構築を図る。

同事業は、島内外の観光事業者や地域住民らに、環境保全活動を取り入れた体験プログラムなどを提案してもらう企画提案型事業。事業費は1千万円で、活動費の6割を助成する。活動規模によって補助額の上限があり、小規模は30万円、大規模は200万円。

紬観光課は島内外の企業のほか、集落単位での事業実施も想定。初年度は13件(小規模10件、大規模3件)程度の事業実施を見込んでいる。5月に公募を開始、7月中旬ごろをめどに市の選定委員会で実施事業を決定し、7月下旬の事業開始を計画している。

助成の対象となるのは、活動に参加した旅行者への返礼品購入費やサービス提供費のほか、広告費や保険料など。採択された事業者には2年間の助成(2年目は3割助成)を行い、3年目以降は助成がなくても事業が継続できる仕組みづくりを行うことで、持続可能な環境保全活動にしていく考えだ。

市紬観光課は同事業の実施によって、「旅行者は訪れた場所の自然などを楽しみながら環境問題などの解決に貢献でき、地域も環境保全に必要な担い手を確保できる。事業者も新たな観光商品の開発や環境保全に取り組む姿勢を示すことで企業のイメージアップにつながる」と相互にメリットとなることを強調。また、観光客の環境保全に対する意識向上や地域住民の観光忌避意識を抑制することで、今後想定されるオーバーツーリズム対策につながることも期待している。

同課は「世界的に環境保全への機運が高まるなか、世界自然遺産となった奄美は、自然環境の保全と活用のトップランナーとしての役割が求められている。旅行者の環境問題意識に関与しながら持続的な奄美観光を提供できる企画を提案してもらいたい」と呼び掛けている。