奄美大島で生まれた新しいアサギマダラの個体が北上する時期を迎えている
日本列島を長距離移動するチョウ・アサギマダラは春の渡りの時期を迎えている。吸蜜植物の群生地がある奄美市住用町では奄美大島で生まれた新鮮な個体が花に集まっており、気温の上昇に伴い本土へと旅立っていく。
春には北上、秋には南下とまるで野鳥のように季節によって移動するアサギマダラ。研究家として知られる栗田昌弘さん=群馬パース大学学長、医学博士=著書によると、春に北上の旅の途中で会える場所は国内で限られているという。その時期にアサギマダラが好んで吸蜜する花が身近には見られないからで、奄美大島や喜界島では3月から6月にかけてアサギマダラを見ることができる。
奄美大島ではムラサキカッコウアザミ(外来のキク科の植物)が野生化して生えている場所があり、群落をつくる場所では観察できる。平地(畑地)から峠など山間部へと島内移動も確認されており、外来種のため駆除が進むムラサキカッコウアザミに代わり山間部では、イジュ(ツバキ科)の花に集まる様子が観察できそう。梅雨の時期に開花する代表的な花だけに、5月ごろまで純白の花に羽を休め、時折飛翔する美しい光景が楽しめそうだ。
栗田さんは「GW(大型連休)あたりが見頃ではないか。春の個体は地元で生まれた新鮮なものであり、奄美大島からの北上は九州の南端(指宿など)だけでなく、いきなり本州(兵庫県や長野県)への移動がマーキング調査によって確認されている。しかし数が少ないため、北上ルートは謎の部分が多い」と指摘する。種子島でも飛来の報告があるが、栗田さんは「奄美大島や喜界島からの移動ではなく、種子島で発生したものではないか」と推測。温暖化により南西諸島だけでなく、九州などでも新しい世代が誕生(春になると成長し蛹化と羽化をして北上)しているという。
吸蜜植物の少なさもあり、秋の南下時期に比べ春は観察できる個体が少ない。マーキング数の少なさが北上ルートの解明を難しくしている。