失語症を克服した奇跡のバリトン歌手

観客を前に熱唱する原口隆一さん(提供写真)


奇跡のパフォーマンスを期待して会場を埋めた観客ら(提供写真)


支えてくれた仲間たちから祝福を受ける原口隆一さん(提供写真)

原口隆一さんが歌の会開催

 【東京】奄美出身のバリトン歌手・原口隆一さんが、このほど仲間たちと共に豊島区で「歌の会」を開催した。コロナ禍で閉塞した日常に、歌う喜びと感謝の気持ちを届けていた。会場を満席にした来場者たちは、その歌声に聴き入っていた。

 「原口隆一と仲間たちによる歌の会」と題した演奏会は、9日豊島区の雑司ヶ谷音楽堂で行われたもの。総面積70平方㍍で天井高5・5㍍の音響空間は、60人の収容。数人を断るほどの人気で、満席となった。福岡県、石川県から原口門下生も集まったほか、東京奄美会前会長の大江修造さん、徳之島出身で司法書士法人津田事務所の津田和紀さん、関東安陵会のメンバーらも着席した。

 「シューマン・君は花のごと」「ブラームス・子守唄」などを披露した原口さんは、「80歳になったとき引退を考えたが、辞めなくて本当によかった」と感激の面持ちで、熱唱を振り返った。津田さんは「全く年齢を感じさせない、しっかりとした声が素晴らしかった」と感想を寄せた。仲間たちとして、鈴木みさとさん、藤岡正子さん、佐藤美由紀さん、川副晶子さん(奄美観光大使)が出演。今井真理子さんと宗のぶひこさんも、ピアノで原口さんのパフォーマンスを支えた。

 原口さんは、龍郷町嘉渡集落出身。1964年武蔵野音大卒業後、音楽科、声楽科の講師など、国内外で活躍。93年、解離性脳動脈瘤による脳梗塞を発症、以後失語症となるが、家族の支えなどでリハビリに励み、2000年に音楽家として奇跡の復帰を遂げた。その体験談がマスコミでも取り上げられ、各地から講演、演奏の依頼が殺到した。「生まれ故郷の奄美で、もう一度やってみたい」とする原口さんの希望はきっと叶うことだろう。