「選抜出場」を祝う文字も張られた、港区での同窓会「関東三五会」
「居酒屋・奄美」での同窓会に集った徳之島出身者ら
2年以上にわたる、新型コロナウイルスの感染拡大。「オミクロン株」という名前に変異して、弱毒化したとの見方もあるものの見えない敵との戦いは、長期化を余儀なくされている。コロナ禍によって、生活環境も激変し人との接触が希薄となって郷友会もなくなった。そんな中、奇跡的にも行われた同窓会の三つの風景を伝えたい。
2021年11月23日に開催された東京奄美会総会。それまで、コロナ禍によって郷友会はことごとく中止に追い込まれていた。群島の出身者らが多く集ったのは、20年の2月23日、東京・代々木公園での「『とくの島』観光・物産フェアin東京」が最後だった。ほぼ2年ぶりに顔を見合わせるとあって、総会では同窓会のような雰囲気が漂っていた。
マスク越しに「はげ~!」の歓喜の声があちこちで聞こえ、抱き合って喜びを表現する人も見られた。総会終了後、JR神田駅すぐにある「居酒屋・奄美」に集まったのは徳之島出身たち。大阪で会社を経営する國元正俊さん、鹿児島のエネルギー会社会長・亘(わたり)元明さんらが、徳之島での「喜寿での全国同窓会」打ち合わせを兼ねて約10人が顔を合わせた。この日の東京都の新規感染者は17人。12日連続で30人を下回り、50人を下回ったのは38日連続のことだった。
そこからさかのぼること約1年、20年10月24日。渋谷区にある居酒屋「大吉」は、徳之島出身の大吉平造さんが、80歳を超えてなお厨房に立っている。同店の10畳ほどの和室で「神之嶺小学校(徳之島)の昭和34年会」が行われていた。幹事の里内廣男さんによれば「30人が道後温泉に還暦祝いに集まった19年に続くもので12人来る予定だった」が、感染などを警戒して半数に減少したという。この日の新規感染者は201人、1日の感染が200人を超えるのは7日前の17日以来のこと。うち98人は、濃厚接触者だったとの発表が都からされている。
そして、昨年12月4日に、港区で開催された「関東三五会」。奄美の美しいサンゴ礁にちなんだ会には、神奈川・鎌倉市の島岡稔さん、栃木・那須塩原市の丸木義博さん、奄美市からは弓削正子さんらも出席。卒寿(80歳)を記念して、男女計35人が元気に広い宴会場で円卓に着いた。大島高校のセンバツ甲子園出場濃厚、との報道がされた頃だった。同会から同校野球部に贈られたお祝いのメッセージに対する、黒木哲二校長の返信も紹介された。都の新規感染者は19人。前週の土曜日と比べて3人増えたものの、23日連続で30人を下回った。島岡さんは「よくやってくれたと感謝の言葉をもらっていますよ」と振り返った。
冒頭の「とくの島フェア」を仕切ったのは、当時関東徳州会会長で現在、東京奄美会会長の井上脩士さんだ。埼玉・鴻巣でクリニックを経営、医師としてもコロナ禍で奮闘している。井上さんは、私見として述べた。「ワクチン接種をしていることが大前提です。体調管理をしっかりしていれば、(同窓会を)やってもいいと思います。また会社の愚痴を言い合う飲み会ではなく、心が通じ合った同志、笑いが伴うような場合は、感染リスクは低い」と。三つの同窓会の状況を伝えると「それは、いい条件の中で開催されましたね」との感想だった。ワクチン接種や変異株の感染状況など、一概に比較はできないが、東京の新規感染者が数千人規模の今、同窓会は開けないだろう。「奇跡的な同窓会」からは、新規感染者は出ていない。
各郷友会は、現在も活動を控えている。東京奄美会の直近の行事予定は、10月に北区の十条小学校を舞台に行われる「大運動会」だ。群島出身者が笑顔で集い、その後、同窓会も開ける環境となっていることを望みたい。
(高田賢一)