循環型農業モデルへ期待

奄美ミート豚舎「秀蔵ファーム」で運用されている排水処理システム

微細藻類を含む処理水を大型バケツに移し替え、藻類と分離する過程を実演した

微細藻類による排水処理システムを試験運用
奄美ミート「秀蔵ファーム」説明会

奄美市名瀬仲勝にある奄美ミート(有)(新納誠人取締役会長)は同社所有の豚舎がある「秀蔵ファーム」で10日、「奄美の微細藻類を利用した豚舎排水処理システム導入説明会」を開いた。3月20日から試験運用が始まり約2カ月が経ったこの日、新納会長をはじめ、同システムの開発者である秩父水生生物研究所・関根敏郎氏、生物学者の東京大学新領域創成科学研究科機能性バイオプロジェクト名誉教授・河野重行氏他関係者らが参加。汚水の浄化、再利用の他、水耕栽培、肥料、飼料への活用といった循環型農業モデルへの期待がかかる。

これまで同豚舎から排出された汚水は、浄化槽で処理、放水してきたが、今後、水質汚濁防止法により厳正な排水処理基準が求められる可能性を踏まえ、微細藻類(二酸化炭素を光合成によって酸素に変換する植物プランクトン)を利用した同システムを実証も兼ね導入。奄美群島広域事務組合「2021年度奄美群島民間チャレンジ支援事業」として採択。同システムは昨年12月に着工、今年1月末に完成。本格的な試験運用が3月に開始された。

微細藻類を利用した同システムの導入は、国内でも宮城県大崎市にある伊藤農場に次ぐ2例目という。同農場では、クロレラなどを利用し運用されている。

説明会では、同システムで利用された微細藻類の調査などの依頼を受けた河野氏が、実証結果を報告。イカダモを確認するも他の株に関しては、同定に向け引き続き調査が必要とした。

システム開発者の関根氏は、動物プランクトン(ワムシなど)による微細藻類の捕食対策として、流動操作による水路のかき回しや、夜間の地下タンクへ流水する仕組みなど、同システムを操作し説明。また、微細藻類を含む処理水を大型バケツに移し替え、藻類と分離する過程を実演した。

同社は今後、(1)水耕栽培による地域ハーブなどの栽培試験の実施(2)ハーブを組み入れたオリジナルハム・ソーセージの製造・観光客への土産物品としての販売(3)奄美の緑藻類(イカダモなど)の利用用途の開発(4)本事業の海外展開―を目指すとしている。

新納会長は「まだ実証段階だが期待は大きい。1、2年単位の長いスパンで取り組んでいきたい」と話した。