畜産でICT機器導入

奄美大島・喜界島のICT機器導入農家を対象にしたアンケート調査結果

「分娩事故防止」など9割以上が目的達成
大島支庁農政普及課調査

県大島支庁農政普及課は、管内(奄美大島・喜界島)で肉用牛を飼養している畜産農家を対象にICT(情報通信技術)機器の導入状況をアンケート調査したところ、畜産現場では分娩管理や個体・発情管理などで利用されていることがわかった。導入により「分娩事故防止」など目的達成が図られており、子牛の生産安定のためにもICT機器の利用・普及が求められそう。

調査は初の取り組み。管内の畜産農家戸数は119戸(今年2月時点)だが、実態把握のための調査は巡回指導にあたっている同課担当職員が直接の聞き取りにより実施。計62戸(奄美市名瀬・笠利・龍郷町28戸、瀬戸内町5戸、喜界町29戸)が調査対象となった。

調査結果によると、導入機器は▽分娩監視カメラ(出産状況の確認)=21戸(うち喜界14戸)▽牛温恵=ぎゅうおんけい=(牛の分娩予知、発情発見システム)=5戸▽牛歩(牛の歩数による発情予測)=1戸▽ファームノート(牛群管理システム)=6戸(同4戸)▽ファームノートカラー(リアルタイムでの活動情報の収集)=1戸。奄美大島では牛温恵を導入する農家が多く、喜界島では分娩監視カメラおよびファームノートの導入が進んでいることが明らかになった。

ICT機器導入目的は、「分娩事故防止」(63%)が最多で、次いで「個体管理」(20%)、「経営改善」(8%)など。この目的の達成度は、「達成」(55%)、「ほぼ達成」(41%)となり、ICT機器を導入した農家の9割以上が導入目的を達成したと回答している。ICT技術を活用することで分娩事故の防止、平均分娩間隔の短縮、受胎率の向上などが期待されることから、同課は「ICT技術を活用して、農場の経営に役立てよう」と呼びかけている。

最も導入されている分娩監視カメラで価格は25万円程度。JAを窓口に国が支援する事業があることから、これを活用すると農家負担は半分程度で済む。機器による分娩管理は、出産の近い母牛の分娩兆候をメール(スマホを通して)で知らせる仕組み。「事故を防止し、牛舎を離れる時に安心」と言えそう。導入・普及では、こうしたICT機器の導入支援事業の活用と同時に、機器を使いこなせるかがポイントになる。

同課によると、管内の畜産農家は次世代の担い手となる30~40歳代が少なく、50~60歳代が半分を占める。70歳以上の高齢農家も少なくない。ICT機器と連動するスマホの普及も欠かせない状況にある。