奄美の環境考えるシンポ

基調講演する宮崎氏

塩田知事(左から2人目)ら4人のパネリストが環境保全と地域振興のあり方などについて

生活と共存しながら「世界の宝」の自然
「共生・共存の発想モデルに」

 【鹿児島】ロータリークラブが主催するシンポジウム「環境を考える」が14日、鹿児島大学稲盛会館であった。奄美が世界自然遺産に登録されたことを受けて、環境保全と地域の発展をどう両立して進めていくかなどについて、塩田康一県知事らも参加して話し合った。

 奄美パーク園長・田中一村記念美術館館長の宮崎緑氏が「奄美の魅力―自然と共生する環境文化」と題して基調講演。1960年代まで世界中が経済成長一辺倒で環境について顧みなかった中、72年の国連人間環境会議からようやく環境保護について世界の人々の目が向くようになった。

 92年にリオデジャネイロであった地球サミットでは、気候変動枠組み条約や生物多様性条約が結ばれた。15年から持続可能な開発目標を定めたSDGsの推進が進められるようになった流れがある中で、昨年の自然遺産登録が実現した。

 奄美の自然は「人間界から全く切り離されたガラパゴスとは異なる環境共生型」であると指摘。人間の生活と共存しながら「世界の宝」となる自然があることを強調した。

 「世界自然遺産の保全と持続的観光の推進」と題したパネルディスカッションでは塩田知事、宮崎氏と島料理研究家の久留ひろみ氏、元KTS鹿児島テレビキャスターの古木圭介氏の4人で討論した。

 塩田知事は「幼少期を過ごした徳之島が自然遺産になったことを誇りに思う」と語り「大島高校のセンバツ出場などもあって奄美への関心は高まっている」と指摘。地元在住者を代表する久留氏は「地元の人たちがまだ自然遺産に認定されたことの意識が浸透していない」ことを指摘。観光客の誘致に関し古木氏は「一過性のブームで終わらせるのではなく、富裕層をターゲットにして世界から客を呼び込むなどの方向性が大事」と語った。宮崎氏は「有人離島8島がそれぞれ異なる文化を持ちながら、奄美という1つのアイデンティティーを持っている」と指摘し「世界が他人の文化を受け入れず、戦争へと進んでいった中、奄美の共生・共存の発想は今後の世界の在り方を考える上でもモデルになる」と期待を寄せていた。

(政純一郎)