関西発奄美

大島高校野球部選抜甲子園出場は一大イベントとして多くの出身者らが甲子園への応援に駆け付けた

島の人の温かさ伝播に感心
出身者らの 親交深めるイベント増期待

 すっかり気温も上がり、「風薫る五月」というよりも初夏の表現がしっくりくるような毎日が続く。月初の大型連休は全国的に好天が続き、筆者の住む関西でもコロナ禍前の日常を取り戻したような光景も見られた。テレビニュースなどでも「3年ぶりの行動制限のない大型連休」と喧伝されていた。筆者が「関西通信員」の名刺を持つようになったのもコロナ禍真っただ中のこと。記者業としては閑古鳥の鳴く日々だったが、この機会に活動を振り返ってみたい。

 時は遡ること2020年の秋、昼食をとっていた飲食店で偶然「奄美の観光と物産展」のポスターを目にした。久々に取材もかねて買い物に行くつもりでいたが、物産展はコロナ禍により中止に。同時開催の「奄美大島移住相談会in大阪」のみが開かれた。このイベントの取材を機に名刺をもらい、細々と続く関西通信員としての活動が始まった。

 とはいえ長く続いた自粛期間により、この後しばらく筆者に出番はなし。受け取った名刺の山は量を減らすことなく埃=ほこり=をかぶるばかりだった。

 昨年末、「まん延防止等重点措置」が一時的に解除されたころ、今年の元日付で発行された新年号への特集記事執筆の仕事が舞い込んだ。新型コロナと闘う奄美出身者が営む飲食店へ訪れ、2人の店主にコロナ禍の2年を過ごした苦しい実情などを聞いた。苦境にあってもアルバイトスタッフや常連客などが「給料はいらないので店の役に立ちたい」と言って働きに来てくれたという話を聞いたとき、“結の心”の片鱗を見た。

 大学卒業後、縁もゆかりもない奄美大島に単身で渡り、身に染みた島の人の温かさ。同僚や取材先の人々だけではなく、近所の居酒屋の奥さん、時折足を運んだ屋仁川のスナックのママさん、プライベートでも仲良くしてくれた美容師さんなど。多くの人が自分を気にかけ、孤独感を打ち消してくれた。“結の心”は筆者が奄美に住んでいた3年間、ひしひしと感じた奄美の魅力だ。遠く離れた関西でも島の人の温かさが伝播していることに感心を覚えた。

 新年号を終えた後には大島高校野球部の選抜高校野球大会出場に関連する取材にも携わった。試合前に川上憲二関西安陵会会長へのインタビュー取材を実施。九州地方以降から同会役員らがメッセージアプリを介して、球児らの活躍を報告しあっていたことを紹介してくれた川上さんの笑顔が特に印象的だった。球児らが故郷を離れ関西に住む出身者らのつながりのきっかけになっていることを実感し心が温まった。

 試合当日はアルプススタンドで観戦した。客席がチームカラーのグリーン一色に染まる様子に感動したが、それよりも試合終了後に誰もが満足げな表情を浮かべ会場を去っていったことに感心した。「この後は試合内容と昔話を肴=さかな=に杯を交わすのだろうか」などと思いつつ、会場周辺の居酒屋に消える観客らを眺めた。

 甲子園の熱も冷めやらぬ今年4月には関西奄美会の総会・芸能大会が3年ぶりの大規模開催として開かれ約900人が来場するにぎわいぶりだった。行動制限が解除され、政府がマスク着用の緩和に言及するなどコロナ禍は徐々に収まりつつある。大規模イベントの開催の条件も緩和されてきた。奄美から約900㌔離れた大阪で出身者らが、この2年の間に冷え込んだ親交を温め直すには、きっかけとなるイベントが必要だろう。

 感染者数も減少傾向にあるため、今後の奄美関連イベントの関西での開催を期待したい。願わくば関西通信員として、関西に住む奄美を応援する者として取材に訪れ奄美の皆さまにもその盛況を伝えることができればと思う。
 (西田元気)