県大島児童相談所(柊山達郎所長)はこのほど、管内の2021年度「子ども虐待相談」の概況をまとめ、公表した。21年度に認定した管内の虐待相談件数は208件で、前年度より43件増えて過去最多を更新。なかでも子どもが心に傷を負う「心理的虐待」が全体の7割以上を占めており、同児相は「全国で子どもの虐待死事件などが相次ぐなか、社会的関心の高さが相談につながった」とみている。
管内の虐待を種別でみると、「心理的虐待」が前年度比46件増の159件と最多で全体の約76%。次いで、直接暴力を振るう「身体的虐待」が同比13件増の30件、育児を放棄する「ネグレクト」が同比13件減の19件と続いた。
相談経路は「警察」からの通告が190件(同比49件増)と9割を占めた。次いで「近隣住民」が11件、「福祉施設等」が3件など。本人からの通告はなかった。
「心理的虐待」は4年前と比べ、2・3倍に増えた。なかでも子どもの前でパートナーなどに暴力を振るう「面前DV(ドメスティック・バイオレンス)」が大きく上昇。同児相は「コロナ禍での収入減、ストレスといった要因も少なからずあるのではないか」と分析している。
このほか、虐待を受けた子どもの年齢別では、小学生60人(低学年31人、高学年29人)、中学生55人、0~3歳児41人、3歳~就学前37人と続き、主な虐待者は「実父」が90人、「実母」が91人。対応別では「助言指導」が157件と最も多く、「他機関斡旋」26件、「継続指導」15件、「児童福祉施設入所」7件などとなった。
全国の児童相談所では2004年の要保護児童対策地域協議会の法定化以降、警察など関係機関との連携を図り、所内の専門職を増やすなど体制強化に努めている。柊山所長は「例え家族間のささいな争いでも、全国では急変する事案も多い」と強調。「市町村窓口など相談できる場所も増えている。子どもの泣き声が聞こえるといった判断に迷う場合でも、近くの機関、189ダイヤルなどへ躊躇=ちゅうちょ=せずに相談してほしい」と呼び掛けた。
なお、県内の中央と大隅を含む3児童相談所の21年度虐待件数は過去最多の2114件。「心理的虐待」が1491件と最多だった。