奄美群島をカバーする「奄美ドクターヘリ」。与論島については沖縄県ドクヘリの利用に向けた協議が進められている
県立大島病院を基地病院とする県の「奄美ドクターヘリ」運用は、徳之島以南の南3島の患者搬送についても原則、奄美ドクターヘリ(ドクヘリ)が行っているが、要請に対応できない場合、沖縄県のドクヘリによる搬送が行われている。沖縄県に最も近い与論島は、沖縄県ドクヘリを利用した方が運航距離は短く、救命効果などが高まることから、奄美ドクヘリが対応可能な場合でも沖縄県ドクヘリの出動要請を可能とするよう、鹿児島県が沖縄県と協議していることが明らかになった。
10日にあった県議会一般質問で禧久伸一郎議員=自民党、大島郡区=が取り上げた。この中で奄美・沖縄両ドクヘリ・自衛隊・消防・防災ヘリ搬送の考え方、両県協議についてただしたのに対し、房村正博・くらし保健福祉部長が答弁した。
奄美ドクヘリの対象エリアは奄美群島と十島村。ドクヘリは各地の消防からの要請後3~5分で離陸し、大島病院がある奄美大島内は10分、徳之島は20分、最も遠い与論島には40分程度で現場に着く。患者の大半は大島病院に搬送されているが、沖縄県や県本土の医療機関にも運ばれている。
房村部長の答弁によると、徳之島・沖永良部・与論の南3島の場合、奄美ドクヘリが対応できない場合には県消防防災ヘリ、自衛隊、海上保安庁に要請し搬送が行われている。房村部長は「奄美南部3島にかかる沖縄県ドクヘリの運用については、県ではこれまで沖縄県に対し文書により協力依頼を行ってきた」と説明。3島のうち与論島について房村部長は「沖縄県ドクヘリの方が、奄美ドクヘリより運航距離が短く、救命効果、後遺症軽減効果が高まると考え、奄美ドクヘリが対応可能な場合でも沖縄県ドクヘリの出動要請を可能とするよう、現在、沖縄県と協議をしている」と述べた。
与論島の場合、沖縄県ドクヘリ利用の方が救命効果など向上するとしているだけに、「与論=沖縄ドクヘリ利用」の早期実現が求められそう。
関連して、県による医師・看護師・助産師の養成確保状況も報告された。医師は、いわゆる「地域枠」を含む修学資金貸与やドクターバンクにおける医師のあっ旋、地域医療支援センターにおける医師派遣の要請にかかる調整や臨床研修医の確保などが進められている。このうち地域枠は2006年以降258人に修学資金を貸与しており、今年は地域枠と自治医科大卒医師合わせて60人を大島病院や瀬戸内町へき地診療所など離島・へき地を含む28カ所の医療機関に配置している。また、看護師、助産師等の看護職員は、看護職員修学資金の貸与や看護師等養成所および病院内保育所などの助成に取り組み、熊毛・奄美地域の人口10万人あたりの看護職員数は増加している。さらに今年度新たに、看護職員等の処遇改善に取り組む医療機関への支援を行っている。