新たに見つかった色紙画9点と封筒をお披露目する福田恵信住職
高倉を描いたと思われる風景画
奄美を描いた日本画家・田中一村(1908~77年)の未発表作とみられる色紙画9点が、奄美市名瀬の真宗大谷派(本願寺)大島寺で見つかった。親交のあった先代住職の故・福田恵照=えしょう=さんへ贈るために描いたとみられ、県奄美パーク・田中一村記念美術館の有川幸輝学芸専門員は「一村の作品である可能性は極めて高い。南画から奄美スタイルへの移行期で、転換期の資料として貴重だ」と話している。
福田恵信・現住職によると昨年3月、一村と親交のあった先代住職の寺内にある書斎を整理した際、本棚の奥に封筒に入った状態で見つかった。封筒には「昭和35年頃画ノベンキョウシナサイト見本ヲ書イテクレタ・田中一村(孝)ノ画」と書いた紙が貼付。恵照さんは旅館主人を介して一村と知り合い、生け花と絵を教え合う仲だったという。
色紙は、南画を模写した山水画などの風景画7点、花を描いた日本画2点。一村が千葉から奄美に移住し、南画を学び直していた1960年ごろに描かれたとみられ、中国南宗の画家「夏珪」や江戸中期の俳人「蕪村」の模写、中には奄美の「高倉」を描いたと思われる風景画も含まれている。
有川学芸専門員によると、模写を示す「?夏珪」の筆跡などは同館所蔵の作品とも酷似しており、当時、奄美で南画を描く画家は一村以外に思い当たらない。「色がついていて、作業も細かい。南画と奄美がクロスした一村らしい絵だ」と評価している。
色紙は5月末に同館が預かって調査を進めている。8月上旬には専門家にも諮る予定で、福田住職は「本物とわかれば父と一村の交流も裏付けられる。みなさんにお披露目もできればうれしい限りだ」と笑顔だった。
調査は8月中を目途に進め、同館での展示なども福田住職と協議の上で検討していくという。