奄美を拠点に気候変動の研究

東大大気海洋研究所が瀬戸内町を拠点に気候変動の研究を開始する(資料写真)

東大大気海洋研、7月から本格始動

 東京大学大気海洋研究所(千葉県柏市)の「地球温暖化に伴う気候変動の調査研究」が、瀬戸内町の研究施設を拠点として7月から本格始動する。亜熱帯化の進む気候変動の現状を奄美大島で調査分析し、台風や気象災害対策などに生かす。同研究所の横山祐典教授は「手つかずの自然の残る奄美大島での海洋研究は、世界でも類をみない。研究以外にも地元の活性化に取り組みたい」と今後の展開と抱負を述べた。

 四つの海流に囲まれた日本列島。2003年、「親潮」の流れる岩手県・大槌市に同大研究所を開設。今回あらたに、「黒潮」の通り道である奄美大島にも研究拠点が置かれた。同町手安の東大医科学研究所奄美病害動物研究所内に、専任スタッフ2人を配置予定。横山教授も準備のため毎月来島している。

 主な研究は①海温上昇や酸性化による生態系に及ぼす影響②海底地形のマッピングによる海洋生物の生息調査③台風の進路や規模などの高精度化④過去の気象災害の調査―など。

 蓄積されたデータを、岩手の研究施設や本部(柏市)と共有・連携し、気候変動のみならず、海洋関連の多岐にわたり研究していく。

 また地域交流として、与論高校(与論町)・古仁屋高校(瀬戸内町)・大島高校(奄美市)でオンラインや出前授業を計画。SDGsの普及にも取り組む。年内には奄美市の市民交流センターで講演会や意見交換を予定している。

 2009年に喜界島で巨大ハマサンゴを発見した横山教授は、奄美には深い思い入れがあるという。「自然豊かな奄美大島で、気候変動のメカニズムの解明につなげたい。また、地域のさまざまな意見を取り入れ、交流を図ることで、奄美全体の活性化になれば」と話した。