タイヤを引っ張り奄美大島一周達成

山下さんらが待つゴールに向かう野口竜平さん(21日、奄美市名瀬・永田橋交差点)

市集落の住民を中心に旅を終える野口さんを出迎えた(同日、同交差点前)

別府在住の野口竜平さん(29)
「ヤポネシア」に共鳴し来島

 「芸術なんて『タイヤ引っ張り』みたいなものだな」―。「芸術探検家」として、大手企業でのワークショップ開催をはじめ様々な分野で活動する大分県別府市在住の野口竜平(たっぺい)さん(29)が21日、奄美大島をタイヤを引っ張りながら一周する旅を、無事終えた。約1カ月、タイヤとともに島内を歩んだ旅のゴールは、スタートした場所でもある、奄美市名瀬の永田橋交差点沿いにある小牧金物店前。野口さんが旅を開始したころ、3夜泊めさせてもらったという、同市住用町の市集落元区長・山下茂一さん(74)ら6人が花束を贈呈。「おめでとう」などと書かれた横断幕とともに、笑顔で野口さんを出迎えた。

 同交差点前にある小牧金物店で、天秤状態のハブ取り棒を作ってもらい、すり減るタイヤのバランスを取りながら5月18日から旅を開始。同店前を皮切りに、同市住用町、瀬戸内町嘉徳、宇検村湯湾、大和村今里、龍郷町を経由し同市笠利などを巡った。タイヤを引っ張る旅は、19年の台湾一周から始まり、琉球弧、「ヤポネシア」に関心を持ち、「島尾敏雄氏がいた地に触れたい」と今年4月に来島。今回の旅も、島尾氏の著書に触れながらタイヤを引っ張り続けた。

 奄美大島一周をともにしたタイヤも、同市名瀬長浜の海岸で水深8㍍にある場所から漁師に拾ってもらったものだという。山下さんをはじめ、各家や公民館などに泊まる中、「奄美では、タイヤを引っ張るという不思議なことをしている私に対して、嫌悪感を示したり、冷たい態度をとる人がいなかった。心温かい人が多く、意味がわかなくても受け入れてくれる寛容さがあると思った」と語る野口さん。

 次回は、トカラ列島、沖縄でタイヤを引っ張る旅を続けたいという。