部活動の地域移行考える ~現場から~

部活動の地域移行は日本のスポーツのスタンダードが変わる大改革だ

受け皿の少なさが課題
地域と学校スポーツによる活性化のきっかけに

部活動の地域移行が取り沙汰されている。教員の働き方改革、長時間労働の改善などを目指し、学校部活動を地域のスポーツクラブなどへと移行するのが大きな趣旨である。スポーツは「学校の部活動で行うもの」という、これまでの日本のスポーツのスタンダードが覆る大改革だ。

教員の負担軽減、少子化によってこれまで通りの部活動運営が年々難しくなっていることなど、部活動改革は喫緊の課題であり、その解決策として地域のスポーツクラブに移行するという「理想」「理念」は理解できる。ただ、現実問題として今まで学校の部活動でやっていたことが、どう変わっていくのか、具体的なイメージが見えづらいところがある。

部活動の地域移行とは具体的にどういったことであり、どんな課題があるかなど、考察してみた。

一口に「地域移行」というが、競技、学校、地域により事情は様々である。例えば競泳の場合は以前から民間のスイミングクラブが充実しており、インターハイなど高校の大会は学校名で出場するが、実際はクラブで指導を受けている選手が大半なので、大きな違和感なく移行できるそうだ。

5月の県中学生バスケットボール選手権では鹿児島レブナイズU15が初優勝した。来年度からは中体連の大会にもクラブチームの出場が認められる。Jリーグの鹿児島ユナイテッドFCもU18、12など下部組織がある。JリーグもBリーグも、クラブとして地域貢献活動に取り組むことは至上命題の一つでもあり、今後の活動の充実を期待したいところだ。

中学軟式野球に関しては、その受け皿が地域にあるのかといえば皆無である。平日は学校の軟式で練習して、週末はフレッシュリーグ、ヤングリーグなど硬式の少年野球に通うという選手が出てくるかもしれない。

地域移行を考える上で一番の課題は、受け皿が現時点であまりにも少ない点だ。スイミングクラブやレブナイズ、鹿児島Uの下部組織など「地域のクラブ」として活動し、実績を残しているところもあるが、全学校、全部活動を受け入れられるだけの体制が地域にないのが実情だろう。

多世代多種目を掲げる「総合型地域スポーツクラブ」が受け皿として最も期待されるところではあるが、それだけのノウハウ、運営体制が充実したクラブが全国にどれだけあるのか、心もとない。

現実的な対応策としては、これまでの部活動を継続しつつ、積極的に外部指導者を受け入れる。これまで通りの指導を続けたい教員は地域スポーツクラブからの登録、派遣というかたちで土日の指導に携わり、正当な報酬を受け取るようにする。

小学校の「スポーツ少年団」の形式が、中学以降も継続されるとイメージすると分かりやすい。少年団の指導は教員ではなく地域の大人が指導者になっているケースが大半である。参加する団員は、保護者が月謝を払いながら活動している。いずれにしても当面の間は、これまで通りの部活動、教員以外の外部指導者が入ったチーム、プロの下部組織など地域のクラブチーム…いろんな「スタイル」が混在しながら、あるべき姿を模索することになるのではないか。

いろいろと課題は山積しているが、地域移行という方針そのものは間違っていない。欧米の場合は元々地域のスポーツクラブが、スポーツの担い手だった。日本の場合は学校部活動が拠点となって発展してきた歴史がある。

であればこれまで通り、学校を「拠点」としつつ、これまで以上に地域の人たちが積極的に関り、教員と協力して、選手の育成、指導に取り組むかたちが一番無理なく地域に移行する新しいスタンダードのように思える。

近年はコロナの影響などもあって、地域と学校との距離が開いてしまった印象がある。地方都市においての学校は地域活性化の拠点でもあったが、過疎化、少子化が進んで統廃合が進んでいる。学校がなくなったことが地域の衰退を象徴している例は枚挙にいとまがない。難しい課題はいろいろあるが、今回の部活動の地域移行が、地域と学校がスポーツを通じてもう一度つながりを持ち、魅力あるものへと成長していくきっかけにしていきたい。
     (政純一郎)