村上さん「本は、こころの架け橋」講話

児童文学作家の村上しいこさんの講演会がオンラインで開かれた(3日、奄美図書館)

 

 

「全てを受け入れてくれた」二つの出会い
県立図書館オンラインで

 

 

 島県立図書館が主催する「2022年度親子読書研修会」が3日、奄美市名瀬の県立奄美図書館4階研修室(サテライト会場)で開催された。「親子読書のあゆみ~未来へつなぐ『宝本』~」をテーマに、オンライン配信された同会場に親子連れや読み聞かせグループの会員ら20人が参加。講演会では、野間児童文芸賞など受賞している児童文学作家の村上しいこさん(52)が「本は、こころの架け橋」と題し登壇。作家の他、講演やワークショップを通し子どもたちに希望を与えようと活動する村上さんから、子どもの頃の「居場所」となったという図書館や本の世界との出会いが語られた。

 県立図書館では2011年度から、1冊の本を親と子、兄弟姉妹、地域の大人と子どもたちが一緒に読み味わう「おやこ一冊読書」に取り組んでおり、この日の研修会では、各読み聞かせグループが、その実践内容を報告。奄美図書館の参加は、今回が初となる。

 講演会に登壇した村上さんは、三重県生まれ。2003年に「かめきちのおまかせ自由研究」(岩崎書店)でデビュー。絵本から小説まで幅広い執筆活動をするとともに、NPO法人「子どもの自立を支援する会・くれよん」の顧問、松阪市ブランド大使なども務めている。

 村上さんは、実の母親の記憶がなく、20歳過ぎまで継母による虐待を受け、学校でもいじめられていたという。しかし、そんな行き場を失っていた小学生時代に出会い、唯一の「居場所」となったのが図書館と本、恩師との出会いで、今思えばそれが生きる「光」だったと話す。そして作家となった今、全てを受け入れてくれた世界を、著書を通して伝えていきたいと、本や読書が持つ力を参加者たちに伝えた。

 同会に参加した読み聞かせグループ「こぐまちゃん」の栄越子さん(73)は「バイタリティあふれる前向きになれる講演だった。大変共感できるお話を聞け、自分も頑張ろうと思えた」と感想を述べた。