奄美発 国政を問う(22参院選㊦)

奄美空港にある無料のPCR検査センター

感染再拡大警戒、医療体制充実を
新型コロナ対策

新型コロナウイルスの感染が、全国で再び拡大しつつある。鹿児島県では6日、感染者数が50日ぶりに800人を超えた。5月中旬以降減少傾向にあったが、7月に入ると前の週の同じ曜日を上回る勢いで拡大。奄美群島でも連日、100人を超える感染者が報告されている。厚生労働省に新型コロナ対策を助言する専門家組織は、オミクロン株の新たな派生型のひとつ「BA・5」への置き換わりが進んでいる可能性を指摘しており、警戒が必要となっている。

今年4月に新型コロナに感染した奄美市の男性(38)は、マスクやアルコール消毒など一定の感染対策はしていたという。しかし、微熱が出たため、発熱外来を受診、感染が判明した。

男性は「いつどこで感染したのか全く分からない。ワクチンも2回接種していたので安心していた」と話し、「症状は軽かったが、自宅待機中は一歩も外に出られず大変だった。職場にも迷惑をかけてしまった」と言い、「以前に比べ、重症患者も少なくなっている。自宅待機の期間や方法などは見直してもいいのでは」と話した。

県は6月29日に「4人以下の会食制限」を第三者認証店で解除、感染防止と経済の両立に舵を切った。ところが、その直後から感染が再拡大する結果となった。拡大は全国的な傾向のため、会食制限の解除との関連は明らかではないが、奄美市住用町の住用国民健康保険診療所の野﨑義弘医師は「気を緩めることなく、引き続き基本的な感染対策を行うことが大切」とし、「感染者が増えると、高齢者など重症化リスクの高い人たちの感染につながる恐れがある。重症患者が増えると、病床の少ない離島への影響は大きい」と指摘する。

昨年夏に感染が拡大した「第5波」では、全国的に病床がひっ迫、入院できずに自宅や療養施設で亡くなるケースが各地で発生、問題となった。新型コロナの受入病床数が限られている奄美でも、県本土に搬送される感染者が続出するなど、医療体制が脆弱な離島医療の現実が浮き彫りとなった。

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現在の感染状況について政府は、新型コロナウイルスワクチンの3回目接種の免疫の衰えや、感染力がより強いとされる「BA・5」への置き換わりなどに言及。ワクチンの4回目接種を急いでいる。7月には、60歳以上と基礎疾患のある人を対象に4回目の接種が始まる。奄美市なども同月中旬から集団接種を開始することにしている。

一方で、若者世代を中心に3回目接種が思ったように進んでいない現状もある。市新型コロナウイルスワクチン接種推進室によると、1、2回目のワクチン接種率は約80%だったのに対し、3回目を終えた人は約60%にとどまっており、特に若年層の接種率が低くなっている。 

同推進室は、3回目接種を推し進めるため、6月に2日間、予約なしの集団接種を実施。約450人が3回目接種を受けた。同推進室の担当者は「予想よりも多くの人が接種した。今後も、引き続き接種しやすい体制を検討しながら、ワクチン接種を呼び掛けていきたい」としている。

政府はワクチン接種の目的を感染対策から重症化対策に軸足を移し、4回目接種を推進している。ワクチン接種後に感染したケースも多く、効果を疑問視する声も聞こえてくるが、野﨑医師は「重症化リスクを抑える効果は海外でも確認されている。医療体制が脆弱な離島では、重症患者を減らすためにもワクチンは必要」と指摘した。

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新型コロナは、新たな変異株などが出現するたびに、再拡大を繰り返す結果となっている。感染が落ち着いている「平時」のうちに、感染拡大した「緊急時」の備えがどれだけできるかが重要だ。収束が見通せない状況が続くが、まずは、一人ひとりがしっかりと感染予防に努めること。そのうえで、政府には医療体制やワクチン、PCR検査などに必要な人やモノをしっかりと準備する必要がある。参院選投票を前に、もう一度各政党、候補者の新型コロナ対策を検証したい。
 (この連載は徳島一蔵、青木良貴、赤井孝和が担当しました)