奄美、逆転勝ちでベスト16へ

【2回戦・頴娃―奄美】8回裏奄美二死二三塁、4番・久志の中前適時打で三走に続いて二走・奥野が生還、2―1と逆転する=鴨池市民

 

 

【2回戦・甲南―大島】3回裏大島無死一三塁、暴投で三走・西田が生還、5点目を挙げる=平和リース

 

 

シード大島はコールド勝ち

 

 【鹿児島】第104回全国高校野球選手権鹿児島大会第8日は11日、鹿児島市の平和リース、鴨池市民の両球場で2回戦6試合があった。 

 奄美勢は奄美が2―1で頴娃に逆転勝ちしてベスト16入りを決めた。シード大島は甲南に9―2で七回コールド勝ちだった。

 第9日は12日、両球場で2回戦6試合がある。奄美勢は喜界が鹿児島実と対戦する。

   =平和リース=
 ◇2回戦
頴娃
001000000 1
00000002× 2
奄美
【頴】今吉―徳田
【奄】久志、奥野、押、久志―勢、奥野、勢、奥野
(頴)
26412550008
打安点振球犠盗併失残
23523450016
(奄)

 【評】三回に犠飛で先制を許した奄美だったが、久志、奥野、押、3投手の小刻みな継投で目先を変え、これ以上の失点を許さなかった。打線は三回以降毎回得点圏に走者を進めながらなかなか1本が出なかったが、八回裏に二死二三塁として、4番・久志が逆転となる中前2点適時打を放った。九回表一死一二塁のピンチを背負うも、久志が粘り強く投げ抜き、接戦をものにした。

    =鴨池市民=
 ◇2回戦
甲南
 2000000 2
 134100× 9
大島
  (7回コールド)
【甲】塩屋、切通―大磯
【大】大野―西田
(甲)
233211301233
打安点振球犠盗併失残
26842712007
(大)

 【評】1点差を追いかける大島は二回裏、二死から好機を作って、相手のエラーで同点に追いつき、2番・大野の中前適時打で2点を勝ち越した。三回は暴投、8番・美島の右前適時打、9番・直江の犠飛、相手のエラーで4点を加えて突き放した。四回も二死から四球で出塁した6番・武田が盗塁を決め、相手のエラーで9点目を挙げた。初回に3四死球と制球を乱したエース大野だったが二回以降は立ち直る。130台後半から140台の直球で押し、甲南打線に付け入るスキを与えなかった。

 

 

「つながり」「流れ」の大事さを実感
奄美

 

 野球は「つながり」や「流れ」が大事だという。奄美の遊畑玄樹監督は「本当にその通りだなぁ」としみじみと実感した。11人のチームだが、大黒柱の久志歩夢主将を中心に粘り強く食らいつき、最後は大黒柱が投打で仕事をしての逆転勝利。これまでやってきたことの全てがつながって凝縮されたような一戦だった。

 「キャプテン、お前が決めろよ!」

 八回裏二死二三塁、絶好の好機で打席に立った久志主将はベンチのナインの言葉を胸に刻んだ。「自分が絶対に打って返す!」。強い覚悟とは裏腹に、バットはボールを芯でとらえることだけに集中し、中前に抜ける逆転適時打で期待に応えた。

 九回表は二死一二塁、一打同点、逆転のピンチだったが「ここで絶対におさえる!」気迫を込め、狙い通りの外角低めの直球で見逃し三振。まるで甲子園を決めたエースのような雄叫びをあげ=写真=、駆け寄った捕手・奥野と抱き合って勝利を喜んだ。

 無論、勝利は主将1人の力で成し得たものではない。少人数でも1人1人が自分の仕事を果たした結果だ。八回表、遊撃手・厚優晴は深い三遊間のゴロをダイビングキャッチ。「投手を助けるために、いつも自分のところに打球が来いと念じている」意気込みをプレーで表現した。良い守備は良い攻撃の流れを作る。その裏の逆転劇では一死から内野安打を放って、口火を切った。

 久志は主将、厚は副将。苦しい時期もコツコツとまじめに練習を積み重ね、チームをけん引してきた2人が、この大一番で活躍できたのも決して偶然ではない。穎娃の町田監督は遊畑監督の高校時代の恩師。こんなところにも「つながり」や「流れ」があったと思うと感慨深いものがあった。

 

 

「意外性の男」が本領発揮
大島・美島永宝一塁手

 

 「周りが打てないときに打つ。意外性の男」と塗木哲哉監督は言う。小学校から野球をやっているが、確かに思い当たる節がある。昨秋の九州大会決勝で打った本塁打はその象徴のようなものだ。相手投手の100㌔に満たないスローボールをチームは打ちあぐねたが、3安打1打点で勝利に貢献した。

 初戦の薩南工戦は無安打。悔しかったから、甲南戦に向けてスローボール対策をやった。しっかり引き付けて打つのが基本だが、引きつけ過ぎると、逆に詰まらされてしまう。引きつけつつ「前でとらえる」さじ加減がなかなか難しい。そもそも遅いボールは苦手な方だがそんなことは言ってられない。

 「練習でやってきたことを出し切るのみ」の覚悟で試合に臨んだ。2点を先取されたが「いつも(大野)稼頭央に助けられる分、自分たちが打って返す」と自分もベンチも焦りはなかった。

 1点差を追いかける二回裏、簡単に二死を取られたが、初打席で遅い直球を練習通りに左前に弾き返し、チーム初安打を放った。そこから打線がつながり、大野の適時打で逆転できた。

 三回の右前適時打=写真=、四回の右前打、当たりは決して良くなかったが、思い切って積極的に振った分、良いところに落ちた。チームもしっかり打ち切れた打球は少なかったが、積極的に攻める姿勢を貫いた分、相手のミスも誘って勝つことができた。

 「甲子園」という大きな目標は確かにある。しかし今は「先のことはあまり考えない。目の前の一戦、1球に集中したい」と言う。次戦をいかにして勝つか、そのために自分のできることやるべきことは何か、そこに意識を向けていた。
                            (政純一郎)