世界自然遺産・徳之島部会

アマミノクロウサギのロードキル防止に、効果的なハード対策の要望も=徳之島町手々の県道(資料写真)

具体的ハード対策も必要
クロウサギ交通事故死で要望

【徳之島】「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島世界自然遺産地域連絡会議」の今年度第1回徳之島部会(県主催)=オンライン=が19日あった。ユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産委員会の要請事項への対応状況を協議。アマミノクロウサギのロードキル(交通事故死)対策で地元の自然保護団体は「アンダーパス」など〝目に見える形〟の公共事業など具体的対策を求める要望も寄せられた。

生物多様性が世界自然遺産記載(登録)の基準となった同4島地区のうち奄美大島と徳之島に関しては特に、絶滅危惧種アマミノクロウサギのロードキル対策が最大の課題。報告によると、徳之島島内のロードキル確認件数は、環境省奄美野生生物保護センターが開設された2000年に集計が始まり、同徳之島自然保護管事務所(現同島管理官事務所)が開設された13年以降に情報収集体制を強化。18年以降は年間平均20件弱を確認。「遺産地域内の発生は非常に少ないが、周辺の管理地域の県道618号線(松原・轟木間)や同629号線(手々・金見間)に集中し、新たな発生地点も確認されている」のが特徴という。

同島の生息数(04年推定値で約200匹)については、今年度中に「再推定」見直しを予定。そうした中にも「近年は生息個体数の増加傾向を期待。しかし、島面積の小さい徳之島では推定個体数も小さくなると考えられ、ロードキルが種の保存に与える影響は、奄美大島に比較して相対的に大きな懸念がある」と指摘する。

質疑で、関係団体からは「ネコ対策によって脅威が薄れて行動範囲が広がり、県道への出没などロードキルにつながっていることも考えられる。クロウサギの生態面から防ぐ手法も考えて欲しい」。また、西表島イリオモテヤマネコのロードキル対策例(アンダーパス123基を設置、引き続き計画中)に関連して「徳之島でも具体的な公共事業の検討を」の要望も。

環境省側は、同ハード対策は「基本的には道路管理者が検討。ネコとクロウサギは違うので有効性の検討も必要」。県側は「奄美大島(遺産区域)でのロードキル防止柵の試行・モニタリング結果を検討して展開したい」とも述べた。

ほか砂防ダムのあり方や観光、認定エコツアー確保対策などにも質疑・要望があった。

県や環境省は今月中に報告案をまとめて有識者(科学委員会)助言を求め、12月1日の世界遺産委提出を目指す。