兄妹の一声から始まった「寄贈の輪」

絵本『たからのしま』を手にする(左から)伊藤利志くんと優利ちゃん(提供写真)

奄美大島の魅力、自然を守る大切さを伝える内容となっている(同)

機内限定絵本、市内各施設へ
奄美市名瀬・伊藤さん親子

「良いものはみんなで共有したい」―そんな兄妹の思いから始まった「寄贈の輪」が、世界自然遺産登録1周年を迎える今月、奄美市内を中心に広がった。同市名瀬平田町の伊藤利志=さとし=くん(5)、優利ちゃん(2)が、母・伊藤康子さん(38)の協力の下、ある一冊の「絵本」を各施設に紹介して回った。

伊藤さん親子は、今年の5月、鹿児島―奄美大島間の移動に利用した「スカイマーク」の旅客機で、絵本『たからのしま』に出会った。世界自然遺産登録を記念し、同社が制作。全路線で貸し出されており、奄美大島の紹介とともに、外来種の存在など課題も伝え、自然を守る大切さが学べる内容となっている。特に、利志くんが気に入り、絵本を販売してないか客室乗務員に尋ねたところ、非売品で、本社に問い合わせるよう伝えられたという。  

事情を知った2人は「買えなくても、通っている幼稚園や保育園に絵本があれば友達と見られるし、図書館などにあれば、違う学校の友達や観光で来た人たち、島のたくさんの人たちに知ってもらえて、みんなに読んでもらえるのにね」と話したという。そして、そんな兄妹の一声から、「寄贈の輪」が広がっていった。

伊藤さんは、同社の了承の下、絵本の説明資料を作成。6月末ごろから利志くん、優利ちゃんとともに同市内の各施設に絵本の魅力を伝え、設置のお願いに回り、ちょうど「県民の日」の今月14日、絵本の全寄贈を無事終えた。

今回の寄贈に向け、同社の窓口として伊藤さんと尽力した、営業本部・松嶋玲子さん(41)は「絵本で伝えたかった奄美の魅力と自然を守っていくことの大切さを、地元の方に共感いただき大変うれしく思う。お子さんから大人まで、多くの方に読んでいただければ」と話した。

主な寄贈先は次の通り。

▽名瀬幼稚園▽平田保育所▽奄美博物館▽奄美海洋展示館▽市民交流センター1階図書館▽各公民館図書室(四谷・伊津部・名瀬・笠利・住用)▽県立奄美図書館▽AiAiひろば(以上全て奄美市)▽県立図書館(鹿児島市)

なお、図書館関連施設は、観覧設置の準備などに1~2カ月程掛かる可能性があるため、要問い合わせを。