瀬戸内町でサンゴ礁シンポ

4年ぶりに開かれたサンゴ礁シンポジウムで基調講演を行う山野さん

「保全優先度高い地域」
専門家が講演、高校生の発表も

 サンゴ礁保全などについて啓発する世界自然遺産登録1周年記念「奄美群島サンゴ礁シンポジウム」(同礁保全対策協議会主催)が31日、瀬戸内町のきゅら島交流館であった。基調講演した専門家は、奄美群島のサンゴ礁を分析し「サンゴ礁形成の北限、海洋生物の多様性など、保全優先度は高い地域だ」と明言。さらに取り組みを深めつつ、知見を高めていくよう訴えた。

 シンポジウムは2018年の喜界町開催以来4年ぶり。国立環境研究所の山野博哉さんが「世界自然遺産の島のサンゴ礁保全」と題して基調講演を行い、奄美海洋生物研究会(興克樹さん)、瀬戸内町海を守る会(祝隆之さん)、大島高校生徒(重信瑚杜子さん、肥後咲朋里さん、安田菜音さん)が活動報告を実施。奄美群島12市町村担当者や町民約60人が耳を傾けた。

 山野さんは、生物多様性条約の科学的根拠に基づき「希少性と独自性」「産卵や幼体の生育環境」などの7基準に照らして、奄美群島サンゴ礁の重要性を分析。「自然が豊かだから海も多様。サンゴ礁文化や垂直・内湾的環境を一カ所に有するなどあらゆる側面からみて点数は高く、全国でもサンゴ礁の保全優先度は高い地域だ」と訴えた。

 保全に向けては、▽水温と海流を考慮した優先保全海域の検討▽遺伝子解析による検討▽対策とモニタリングの継続―などを課題に挙げ、「気候変動による水温上昇などサンゴ分布の北上は続いている」と今後の問題点を強調。「白化しにくい所を徹底的に守るなど、優先度をつけて保護に当たってほしい」とアドバイスした。

 この他、大高生徒3人は日焼け止めの成分が奄美のサンゴ礁の白化現象を促すという研究成果を披露し、啓発活動の必要性などを訴えた。興さん、祝さんは、奄美大島周辺海域の調査結果を紹介。「回復しつつある」などと報告した。

 山野さんは「社会的課題としても深まっており、これを世の中のアクションにつなげてほしい」と奄美での取り組みを総括。「私の知見と現地の知見を合わせながら、さらに実験を充実するなど知見を高めていってほしい」と呼び掛けた。

 午前中に予定していた水中観光船による「サンゴ観察会」は悪天候のため中止した。