徳之島で世界自然遺産一周年イベント

「世界自然遺産の森と遊ぶ」三京林道エコツアーには午前、午後の部合わせ約200人が参加した=7月31日、天城町


世界自然遺産価値を育んだ「悠久の自然と豊かな暮らし」を解説した星野一昭氏

人類の宝育んだ「環境・文化・伝統を誇りに」
星野氏講演も

 【徳之島】NPO法人徳之島虹の会(政武文理事長)主催の「世界自然遺産登録一周年記念行事」が7月30、31の両日あった。環境省自然環境局長や鹿児島大学特任教授を歴任し、現在国際自然保護連合(IUCN)の南・東アジア地域代表理事を務める星野一昭氏(東京都)が3回にわたり講演。「世界自然遺産の森と遊ぶ」天城町三京林道でのエコツアー(2回)には家族連れなど約200人が参加。「人類の宝・財産」価値を認識し合った。

 民間企業(三井製糖など)の事業助成も受けて民間主導の一周年記念イベント。「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島の世界自然遺産候補地科学委員会」の委員も務め、登録(昨年7月26日)に貢献した星野氏が30日夜、伊仙町中央公民館で、エコツアーガイドら約40人を対象に演題「世界自然遺産のいろは―もっと学ぼう!徳之島の自然遺産」で講演した。

 31日は午前9時開始と午後1時半開始の2回、▽星野氏の講演「悠久の自然と豊かな暮らし」▽世界自然遺産の森の広場・音楽祭(いずれも西阿木名小三京分校講堂)▽虹の会のエコツアーガイドと歩く「世界自然遺産の森・三京林道自然探索」があった。

 虹の会の政理事長は開会あいさつでそれぞれ「島の方々が、島の自然の魅力を知り、なぜ世界自然遺産登録が実現したのかも体感をして誇りに思って欲しい。そしてこの世界人類の宝・財産を未来に伝えていくことを考えましょう」などとアピール。

 星野氏は講演で「徳之島の一番の魅力は子どもが多い日本トップクラスの合計特殊出生率。そんな素晴らしい島がプラス・世界自然遺産条約で認められた。人類の宝の付加価値が加えられた」。奄美の自然の特性には「〝よく見えない〟と言われるが、亜熱帯の森の中に1千万年の進化の歴史を伝える貴重な生き物がたくさんいる。森を歩くことが大事。ガイドの方と一緒に入ると実感できると思う」とアドバイス。

 アマミノクロウサギは「人類全体・世界の人々の遺産を日本政府が守らなければならない」。クロウサギにとっての脅威は①交通事故死(ロードキル)②山に入ったネコによる捕食。ふんの分析結果から飼い猫が山にも侵入しているケースも指摘し「法律をつくっても、結局は島に住む1人ひとりが意識して行動を変えないと、将来にわたってクロウサギの生存が守っていけない」。

 また、「徳之島にクロウサギが残っているのは奇跡。奄美大島の森林面積の4分の1で、井之川岳山系と天城岳同の南北に分断。クロウサギが多い道は車の速度を落とす。ネコは放し飼いをせず、不妊去勢手術をして適正飼養のマナーを守って欲しい」。その上で「奄美の環境文化が世界自然遺産の価値を育んできた。地域の人たちの暮し・文化・伝統を誇りに思って欲しい」と強調した。

 音楽祭(午前・午後)には徳之島混声合唱団や徳之島DANCING、島唄の中島清彦さん、地元シンガーソングライターの禎一馬さんや安田竜馬さん、「飯村佳之とゆかいな仲間たち」などが出演した。