中1自死事案で研修会

生徒の父親(手前右)の話を聞く市教委の職員ら

再発防止への思い語る
生徒父親や栁弁護士
奄美市教委

 奄美市教育委員会は1日、2015年に奄美市の中学1年男子生徒(当時13歳)が、担任教諭の不適切な指導で自死した事案に関する研修会を市役所会議室で開いた。村田達治教育長や石神康郎教育部長のほか学校教育課の職員ら8人が参加、亡くなった生徒の父親と同事案に関する調査報告を行った第三者調査委員会で副委員長を務めた栁優香弁護士(福岡県)が、当時の学校が行った指導の問題点などを指摘。今後も相互に情報共有などを図りながら再発防止に取り組むことを確認した。

 研修会は、同事案から7年が経過、当時を知る職員が異動等によりいなくなる中、自死に至った経緯や再発防止を願う遺族の思いを知ることで、市教委として、教育現場での指導の在り方などを学び、再発防止への取り組みなどに生かしていくことを目的に行った。冒頭、出席者全員で、亡くなった生徒に黙とうを捧げた。

 栁弁護士は、第三者調査委の調査報告書をもとに、学校や教諭が行った指導のどこに問題があったのかなどについて、職員の意見なども聞きながら説明。「いじめをしていないにも関わらず、何度も反省を強いられ、家庭訪問までされたことで、生徒は命を絶ってしまうほど傷ついてしまった。教諭は自身の指導が間違っていないことを確認するために訪問したのではないか。そこには、生徒の気持ちに寄り添う姿勢が欠けていた」とし、「子どもたちに必要なのは、生徒指導ではなく、子どもたちの思いに寄り添った生徒支援という視点」などと話した。

 父親は「息子が死ぬまで、子どもの自死は他人事と考えていた。なぜ、死ななければいけなかったのかその理由が知りたかった」と第三者調査委の設置に向けて活動した経緯を語り、「どんな子どもや家庭にも、同様の自死は起こり得る。だからこそ、二度と起こさないために学校、地域、家庭で何ができるのか。みんなで考えてほしい」と話した。

 研修後、村田教育長は「当時を知る職員もいなくなるなか、報告書を読むだけでは伝わらない、当事者の思いを聞けて良かった。職員も改めて課題について理解を深めることができた。今後もこのような機会を設け、事案をもとに市教委や学校現場で再発防止に向けた共通認識を持てるよう努めたい」と話した。