通所利用高齢者が手作り

手作りしたのぼり旗を大高野球部に贈呈、記念写真に収まる利用者・職員ら(提供写真)

他の事業所分を含めて縫い合わせ作業に尽力した沖ヨシさん(提供写真)

ミシンで作業した朝良子さん(右)と発案者の中村千登勢さん

球場スタンドの一番上に掲げられ選手らを見守ったのぼり旗(提供写真)

大高野球部応援のぼり旗 12本作製
県大会球場スタンドで見守る

 甲子園で熱戦が繰り広げられている全国高校野球選手権大会は終盤を迎えているが、鹿児島県の代表を決めた夏の大会で、決勝まで進出した大島高校野球部の活躍を見守ったのが球場スタンドに設置された「のぼり旗」。奄美大島介護事業所協議会(盛谷一郎会長)の主に通所系サービス(デイケア・デイサービス)を利用する高齢者らが手作りしたもの。各事業所では大島の試合のたびに利用者と職員が大声援を送り続け、選手らの奮闘を励みにした。

 大高野球部がセンバツ出場の際の鶴文字に続き、のぼり旗贈呈を発案したのは介護事業所協理事の中村千登勢さん(48)=むかいクリニック=。職場のチームで舟こぎ競争に出場した経験などから「のぼり旗があると気持ちが高まる。『きばりんしょれよ~』などのメッセージ付きのぼり旗を県大会に出場する選手たちに贈りたい」と決意した。

 賛同した12事業所(あおぞら・きずな・センリアン・芦穂の里・虹の丘・わんわんネット・ゆとりあんヘルパー・にじいろ・和月龍郷・春日・なんり・むかいクリニック)がそれぞれ一つずつ12本作製。6月上旬から取り組み、通所を利用しながらの作業は2週間ほどかかり下旬に完成した。高さ185㌢幅60㌢ののぼり旗(布製)は、表は「大島高校」の文字で統一しているが、裏は各事業所でメッセージやデザインを考案。「島の心一つに」「まーじんまキバろうでぃ」「スットゴレ精神」などの内容で応援の気持ちを込めた。

 どの事業所も80~90歳代の利用者にメッセージやデザインを考えてもらった上で、職員も手伝いながら利用者が手作りで作製。むかいクリニックでは奄美らしさが伝わるよう大島紬の端切れを活用し縫い合わせたが、ミシン作業を引き受けたのが週2回のデイケアを利用して3~4年になるという朝良子さん(92)。朝さんは「子どもが7人いるが、ほとんどが大高卒で『やらんといかん』という気持ちで取り組んだ。ピッチャーの大野君など今度の子どもたちは気構え、頑張りが違う。応援の力を注ぎながらミシンでひと針、ひと針縫いあげた」と振り返った。

 中村さんは「頑張っている選手たちを、少しでも近く感じたいという高齢者の方々の気持ちを形にしたくて取り組んだ。なんりデイサービス利用者の沖ヨシさん(91)は、他の数事業所の分の旗を縫い合わせる大変な作業をしてくださり、とても感謝している。作製する期間、応援する期間、他の事業所さんとのつながりも感じることができ、大変楽しかった」と語った。

 完成した12本ののぼり旗は、鹿児島大会出発前の最後の紅白戦が行われた三儀山の球場前で大高野球部に贈呈。手作りした各事業所の利用者、職員らが駆け付け選手らと記念写真を撮り、笑顔に包まれた。

 県代表となった鹿児島実業との決勝戦を中村さんは球場で応援。忘れられない光景という。「スタンドの一番上にのぼり旗が掲げられ、風になびいていた。各事業所、利用者のみなさんの応援のメッセージが球場全体に届いているように見え感激でいっぱいになった」。