海の彼方の神々へ豊作祈願

海の彼方の神々へ豊作を祈願した平瀬マンカイ

浜で行われた「スス玉踊り」などの八月踊り

3年連続無観客で開催 秋名・幾里集落住民のみで
「秋名のアラセツ行事」の一つ「平瀬マンカイ」

 「3年連続で無観客開催」―。旧暦8月の最初の丙(ひのえ)の日に開催されてきた国の重要無形民俗文化財に指定されている龍郷町の「秋名のアラセツ行事」の一つである「平瀬マンカイ」が8月31日夕、秋名湾西側の海岸で行われ、海の彼方の神々に豊作を祈願した。収束が見えない新型コロナウイルス感染症の影響で今年も秋名・幾里集落住民のみ、観客なしでの開催を余儀なくされた。台風11号の影響が心配され、開始直後に雨に見舞われたが、その後は雨もやみ、開催することができた。

 開始前に感謝状贈呈式があり、5年以上岩の上に乗り、平瀬マンカイ継承に尽力した龍宮スガ子さん、山田仁司さんの2人に感謝状を贈呈した。

 平瀬マンカイは海の彼方(ネリヤ)の神々へ豊作を祈願する祭りで、午後4時すぎに始まった。神平瀬にはノロ役の女性5人が岩に上り、女童(めらべ)平瀬には男性3人(ノロの補佐役)と女性4人の計7人が岩に上った。神平瀬と女童平瀬とで五穀豊穣を願う唄の掛け合いが行われ、海の彼方の神々へ豊作を祈願した。それが終わると、神平瀬では合唱し祭詞を唱え、ネリヤの神に対して礼拝し、祭りは終了した。

 終了後、12人は岩から浜に下りて、2集落住民と一緒に「スス玉踊り」など八月踊りを披露した。

 コロナ禍の前は、浜から集落へ移動し、観客を交えて踊り、飲食を共にしてきたが、今年もその様子を見ることはかなわなかった。

 また、平瀬マンカイを見に来ていた大勢の観光客や見物客らの姿は今年もなかった。報道陣の撮影は、人数を制限して行われた。

 「秋名アラセツ行事保存会」の窪田圭喜会長(81)は「ショチョガマが中止となり、(早朝に)太鼓の音が集落に響かなかったことは寂しい。来年以降のコロナ収束を願っている。来年は二つの祭りができることを祈念している」と話した。また、保存会会員が約50人に増えたことを喜んでいた。

 祭り会場には竹田泰典町長、前田豊成議会議長も見学に訪れた。竹田町長は「(無観客で)規模縮小しての開催は安全安心のため致し方ないこと。先人が継承してきた伝統文化を今後も大切にしていかねばならない。すごい文化財であり、子どもたちが郷土に誇りを持っていけるように文化伝承を支援していきたい」などと述べた。