研究報告をする、重野さんと白田さん
奄美郷土研究会(森紘道会長)は4日、奄美市名瀬の県立奄美図書館で第373回例会を開いた。参加者らは、奄美大島方言の調査研究と保存活動の取り組み及び成果と課題について聴講した。
2009年にユネスコ(国連教育科学文化機関)は「消滅危機言語」を発表。2500言語のリストの中には、日本で話されているアイヌ語、八重山語、与那国語、八丈語、奄美語、国頭語、沖縄語、宮古語の八つの言語が含まれている(※ユネスコでは「言語」と「方言」を区別せず、全て「言語」で統一)。
今回のテーマは「奄美大島方言の調査研究・記録保存活動について」。元広島経済大学経済学部准教授の重野裕美さん(39)と広島大学大学院人間社会科学研究科准教授の白田理人さん(34)夫婦が講師を務め、言語研究者として奄美大島方言を対象に取り組んできた活動と成果について、調査資料や音声データなどを用いて報告した。
調査や保存活動については、①国立国語研究所プロジェクト(16年4月~)②日本言語学会プロジェクト(21年4月~)③西古見方言の音声録音(21年11月~)―の三つの取り組みにより進めているとした。
②のプロジェクトでは、「シマユムタ伝える会」と「あまみエフエム」が地域の協力団体となり、対象20地点のうち約10地点の調査が終了し、基礎語彙=ごい=約400語を収集したことを成果として報告した。
今後の展開としては、語彙データを増やし、より適切な表記法とその普及方法の検討などを挙げ、伝統方言話者の確保と高齢化を問題点とした。
シマ唄の研究を行っている、奄美市名瀬から参加した福山尚史さん(62)は「方言もシマ唄も口伝えという点で共通点があると思い参加。言語形成期(13歳~15歳)を対象地域で生活していた人を対象とする点など共通していた」と話した。