未発表作9点全て一村作品と認められる

作品を前に、福田住職と宮崎館長

作品の入った封筒に貼られていたメモ

記念美術館、命日の前日に発表
22日から常設展で公開

 県奄美パーク・田中一村記念美術館は10日、新たに発見された田中一村の作品とそれを含めた常設展の実施について記者会見を行った。発見された作品は、一村と親交のあった大島寺の故福田恵照住職が一村からもらったとされる色紙9点。会見の冒頭で、宮崎緑館長は「一村の命日である9月11日を前に、初めて見る作品が世に出ることはゾクゾクするような幸せな気分」とあいさつした。

 会見によると、館長や歴代の学芸専門員、県職員などで構成する鹿児島県田中一村記念美術館特別企画運営委員会が開かれ作品について協議。結果は「全ての作品について、由来がはっきりしていることや、作品の筆致から一村の作品であると認められる。ただし、印・署名はない」と結論を出した。また、資料名「高倉遠望(たかくらえんぼう)」や「茶花(ちゃばな)と烏瓜(からすうり)」なども、同委員会で名付けられた。

 作品は全て色紙(縦27・2㌢×横24・2㌢)に描かれており、2点は1960年(一村51歳)の頃、奄美で描かれたもの。7点は制作年および制作地は不詳とされた。

 それぞれの作品について説明した有川幸輝専門学芸員は「技量があり、いろいろな描き方ができることを伝えたかったと思う。一村が大切にしていた作品に間違いない」と話した。

 発見した福田恵信・現住職は「先代住職の寺内にある書斎を整理した際、本棚の奥に封筒に入った状態で見つかった」と説明し、「封筒には『昭和35年頃、画ノベンキョウヲシナサイト見本ヲカイテクレタ田中一村(孝)ノ画』と書かれたメモが貼ってあった」と発見時の状況を説明。また「一村の45回目の命日を前に父に良い報告ができた。一村の強い息づかいが感じられる作品なので、みなさんにも見て感じてほしい」と話した。

 この作品は、田中一村「秋の常設展」(22日~12月20日開催)で見ることができる。同常設展では、全79作品および五つの資料の展示を予定している。