クロウサギ交通事故死

比較的少なかった夏場にもロードキルが多発した(写真は、アマミノクロウサギ)

過去最多上回るペース
防止へキャンペーン 11月15日まで
奄美大島・徳之島

 世界自然遺産に登録された奄美大島・徳之島にのみ分布する国の特別天然記念物・アマミノクロウサギが環境省の調べで15日、2022年1月から8月末までの交通事故死の件数が、73件だったことが分かった。これは過去最多となった21年(1~12月)の78件を上回るペースで、同省は「最多件数を更新する可能性が非常に高い」と指摘。活動が活発になる秋期にかけ、「アマミノクロウサギ交通事故防止キャンペーン」を実施する。

 アマミノクロウサギは、奄美大島と徳之島のみに生息する固有種で、同省により絶滅危惧ⅠB類に指定。夜行性で、特に繁殖期に入る秋から冬にかけて活動的になり、道路上に出てくることが多いとされる。近年、分布域が広がり林道で多く見られたロードキル(交通事故死)が、国道・県道でも多発している。

 同キャンペーンは、毎年秋ごろ開催され、今年は今月15日から11月15日まで実施。10月10日には、世界自然遺産センター(奄美市住用町)で、チラシ配布など特別イベントが行われる。他に、関係各所でポスター掲示、チラシの配布、広報誌での発信、奄美空港ロビーで特別展示を予定。住民、観光客らに安全運転を呼び掛け、クロウサギをはじめ野生動物の保護に関する普及・啓発を図る。

 同省によると、21年のクロウサギの交通事故死亡件数は、奄美大島が過去最多となった61件、徳之島で17件。今年は8月末時点で、奄美大島で54件、徳之島が過去最多だった18年と同数の19件を確認している。

 また、両島を合計した月別の交通事故死亡件数(00年1月~21年12月の月別累計)をみると、8月の25件に対し、9、10月が各56件と、秋以降に急増する傾向がみられる。しかし、今年の事故の特徴として、これまで比較的発生が少なかった夏場にも多発していると報告。特に徳之島では、今年8月だけで7件確認。同島で過去最多となる、月あたりの発生件数となった。

 同省は運転にあたり、▽林道では急に飛び出してきても、すぐに止まれる速度で運転▽夜間は特に注意し、ゆとりある運転を▽交通事故が多発している地点には、警戒標識が設置されており、特に注意を―などと呼び掛けている。