赤土流出防止対策協

赤土流出による環境への影響やサンゴの保全と活用などを学んだ学習会

サンゴ礁の保全などで学習会
環境教育や観光資源活用提言

 奄美地域赤土等流出防止対策協議会(会長=新川康枝・大島支庁長)は29日、奄美市名瀬の県大島支庁で2022年度赤土等流出防止対策学習会を開いた。新川支庁長や同庁職員、奄美大島採石業協同組合の関係者らが出席したほか、奄美群島の県出先機関の職員らがオンライン参加。奄美海洋生物研究会会長の興克樹さんが「サンゴ礁の保全と活用」と題し、奄美大島周辺海域の現状や環境保全に向けた取り組みなどについて話した。

 学習会にはオンラインも含め、約40人が参加。興さんは赤土流出防止対策などによって奄美海域のサンゴが回復傾向にあるとし、保全に向けた今後の展望として、▽保全海域の再評価と新たな保全海域の選定▽オニヒトデ発生海域でのサンゴ保全体制の構築▽サンゴの環境教育およびエコツアーへの活用―などを提言。外洋のサンゴに比べ生育環境の影響を受けやすい、内湾やリーフ(岩礁)内のサンゴの保全の必要性も指摘した。

 興さんは、20年以上に渡り、奄美大島周辺海域のサンゴの生育状況などを継続調査したデータなどを提示。1998年に奄美市名瀬の大浜海岸沖で発生したサンゴの白化現象や2000年以降続いたオニヒトデの大量発生などの影響を受け、02年には全盛時の2割程度まで減少するなど、危機に瀕していた状況などを説明した。

 奄美大島での赤土流出については、2010年の奄美豪災害時に大量の土砂流出が起きて以降は、大規模な流出が確認されていないことや、同協議会の取り組みなどにより、土木工事による土砂流出が減少したことから、「赤土流出防止によって、サンゴ礁がかなり回復している」などと指摘、8割程度まで回復が進んでいるという。

 サンゴは、内部に生息する褐虫藻が光合成によって作り出した栄養分を取り込むことで生きているが、興さんは「赤土が流出し海面が濁ると、褐虫藻が光合成をできなくなりサンゴが弱ってしまう。赤土が堆積するとサンゴの定着を阻害してしまう」と指摘。また、赤土の流出がオニヒトデの大量発生に影響を与える可能性についての研究も進められているという。