笠利町屋仁の養鶏場一晩で70羽咬傷被害も

犬によるとみられる咬傷被害が続いている鶏舎(手前が死骸)=提供写真=

侵入を示す破れた網=提供写真=

周辺で犬確認、適正飼育指導

奄美市笠利町屋仁にある養鶏場で昨年11月から、ケージの中で育成中の若鶏や採卵鶏などの咬傷被害が続いている。いずれも夜間に侵入した動物による被害とみられ、今月4日には約70羽(一晩で)と多量の死骸を確認。鶏舎周辺では飼い主が存在する複数の犬が確認されたことから、関係行政機関が飼い主に対し、放し飼いをしないよう指導、順守を求めている。

「経営への影響大きく死活問題」

養鶏場の創業者である南利郎さん(75)によると、咬傷被害は今回で5回目。総数180羽に及び、被害額は50万円に達する。被害鶏の中には南さんが試行錯誤を重ねながら育ててきた人気の地鶏・黒さつま鶏も。南さんは「養鶏に必要な飼料価格が2・5倍に高騰するなどコストが増す中、これだけ被害が続くと経営への影響が大きい。死活問題であり、育てた鶏の死骸処理は精神的な負担にもなっている」と憤る。

被害を与えているのは鶏舎の屋外に設置した監視カメラの画像などから雑種の中型犬とみられている。鶏舎は地面から60センチの壁の上に、風通しを良くするため網で覆った構造。南さんは「数匹の犬が網を引っ張るなどして破り侵入し、まるで弄ぶかのように鶏を押さえつけて殺傷している」と話す。目撃されている犬は首輪もしておらず、放し飼いの状態。飼い主は特定されているという。

南さんは、狂犬病予防などの関係から飼い犬の登録業務を担当する笠利総合支所市民課に相談。同課によると、飼い主は未登録の犬も存在することから登録を指導するとともに、咬傷被害相談を受けて捕獲用わな設置など対応している。同課は「保健所とも連携しながら適正飼育を飼い主に指導していきたい」と説明する。

名瀬保健所では飼い主への指導を行っている。「夜間、養鶏場の周辺で放たれた犬が確認されたことから、犬による咬傷被害の可能性がある」として指導したもの。犬の飼い主に対し、▽放し飼いをしない▽財産に被害を与えてはならない―などの順守を求めた。

こうした行政側の対応に南さんは「指導で終わりにせず、被害を発生させない取り組みまで踏み込んでほしい。警察にも相談している。犬による被害を示す証拠となるよう、監視カメラの設置も工夫していきたい」と語った。