恒例「種下ろし」行事を開催

地元住民の他、観光客の姿も見られた外金久集落の「種下ろし」行事(8日、外金久集落)

 

今年も「伝統文化」継承
笠利の外金久集落

 

 奄美市笠利町の外金久集落(諏訪光三区長、233世帯493人)で8日夜、恒例の「種下ろし」行事があった。法被や浴衣を着た住民らが、同集落内3カ所を「ヤーマワリ」(家回り)を実施。唄やチヂン(太鼓)、三線を聴きつけ参加する観光客の姿も見られ、コロナ禍で同行事を取り止める集落が少なくない中、同集落では、今年も伝統文化が継承された。

 種下ろしは、笠利町や龍郷町など奄美大島北部に伝わる、1年間の締めくくりとして行われる伝統行事。各家庭を踊り清め、来年の豊作や家の繁栄が祈られる。この日の赤木名地区では、中金久集落、里集落でも同行事が行われた。

 同集落では、コロナ禍前の2019年まで、全13カ所で同行事を実施。二晩掛け夜中の午前0時ごろまで六調、八月踊りが各場所で行われていたが、コロナ禍以降は規模を縮小。今年は昨年に引き続き3カ所、午後10時ごろまで行われた。

 赤木名生活館でされた祝い付けの地踊り後、赤木名港前グラウンドゴルフ場から行事は開始。70人ほどの住民が集まるなか、同集落に建てられた新築住宅、同生活館前と順次移動。訪問先ごとに踊りの輪が広がっていき、八月踊りや六調を展開。ハナ(寄付金)の披露では「よいしょ、よいしょ、よいしょ」など掛け声とともに三線が弾かれ、秋夜の同集落を大いに盛りあげた。

 東京から観光で初めて夫の中村祐次さん(58)と来島、行事に偶然参加したという妻・直子さん(51)は、「(種下ろしの)練習をしている音を聴き、散歩の帰りに寄った。温かく迎えられ、皆さんの歌声が聴け、地域のお祭りを実感できた。本当にいい記念になった」と笑顔で話した。

 諏訪区長(70)は「今年7月開催の六月灯の時もそうだったが、今回も集落の多くの人々の思いが形となった。外金久集落が各行事を開催し続けることで、他集落にも良い影響を与えられれば」と願いを語った。