ペット飼う責任を  ~ニュースFollow~

夜間、鶏舎周辺で目撃された犬(提供写真)

犬の多頭飼育、放し飼いで指導
名瀬保健所17年度から継続
繁殖防止へ不妊去勢手術要請も

奄美市笠利町の養鶏場で犬によるとみられるニワトリの多量の咬傷被害発生が表面化したが、養鶏場周辺には犬を多頭飼育し、放し飼いも確認されている飼い主が存在、名瀬保健所(県大島支庁保健福祉環境部)は適正飼育を求める指導を繰り返し行っている。飼い主は理解を示すものの改善には至らず、ペットを飼う責任の自覚と実行があらためて問われている。

狂犬病予防のため法律を所管するのは県で、それに基づいた登録・注射は事務手続きや実施をするのは市町村。指導は県が市町村と協力しながら行っている。問題となっている飼い主は、飼育している犬のうち登録しているのは指導によって実現した1頭のみという。

名瀬保健所によると、この飼い主への指導は2017年から。「自宅近くでたくさん犬を飼っている人がいる」「鳴いている犬がいる」といった住民からの苦情が役場(笠利総合支所)にあり、役場から保健所へ情報提供された。口頭や文書による指導は「法律に基づいて登録・予防注射をする」「放している犬をつなぐ(係留)」ようにという内容。飼育状態に対しての指導で、飼い主の自宅から離れた犬は周辺の林の中に入り込むなど野放し状態にあり、繁殖する可能性もある。

保健所では繁殖を防ぐため、「できるだけ早く不妊去勢手術」を飼い主に求めているものの、費用が必要な経済的な問題もあり進んでいない状況。多頭飼育の改善へ犬の数を減らす取り組みは、行政のほか、民間団体も協力し引き取り・譲渡が行われているが、確認されている数だけで約20頭が現在も飼われている。「頭数が多く現状では適正飼育ができない。飼い主に話をして、民間団体の協力も得ながら1頭でも引き取ってくれるところを探し、譲渡を進めている」(名瀬保健所)。

①不妊去勢手術②数を減らすため引き取りの説得・推進③きちんとつないで飼育―の三つが関係機関による指導の柱。保健所によると、こうした取り組みに対し飼い主は「わかりました」「ちゃんとやります」と回答するものの、改善は進んでいない。

現状が続くと、鶏舎周辺での犬の確認からニワトリ咬傷被害だけでなく、飼い主の自宅から離れた犬により人的被害が出る恐れがある。また、広範囲な移動によって希少種を含む野生の生き物への被害も考えられる。保健所など行政機関は引き続き改善に向けて飼い主への指導を継続していく方針。

こうした問題を抱えた多頭飼育は他にも把握されている。全体的に共通する傾向として「経済的に余力がないのに自分の飼育能力を超えた数の動物(犬や猫)を飼い、手放すことができない」があり、例として多いという。精神疾患の一つとされる「アニマルホーダー」の可能性もある中、飼育改善を飼い主だけに求めるだけでなく地域全体で対策を探る取り組みが解決の糸口になりそう。(徳島一蔵)