認知症テーマに講演会

認知症への向き合い方などを通し、患者や家族への理解を深めた公開市民講座

「住み慣れた地域で見守る支援を」
鹿児島病院の黒野医師
公開市民講座

 認知症との向き合い方などをテーマにした「第15回公開市民講座」(奄美薬剤師会主催)が23日、奄美市名瀬の市民交流センターであった。認知症の予防や認知症患者への対応、介護の在り方などについて、鹿児島市の済生会鹿児島病院在宅推進室長の黒野明日嗣医師が講演。「認知症と診断されても普段の生活を変えないことが大切。住み慣れた家や地域で、できるだけ自立した生活が送れるように見守るケアが必要」などと話し、認知症患者やその家族の悩みなどを正しく理解し、患者の尊厳を傷つけない支援の重要性を呼び掛けた。

 「認知症ときちんと向き合うにはどうしたらいいか」をテーマに講演した黒野医師は、認知症の臨床・研究・啓発活動に取り組む認知症ケアの第一人者。講演会では、認知症への理解が社会全体に広がっていない現状について、「多くの人が知っている認知症の知識は重症患者の症状で、多くの場合は普通に生活できている。認知症になってもすべての記憶が失われるわけではない」などと話し、認知症と診断された途端、周囲の理解不足から患者や家族の生活が一変するケースが多いことを指摘した。

 そのうえで、「認知症になっても喜怒哀楽を感じる一人の尊厳を持った人であることを忘れないでほしい。診断されたからと言って生活環境を変える必要はない」とし、認知症の人に対し「できるかできないか、0か100かで考えず、どうしたらできるのかを考えてほしい」などと指摘した。

 また、不安から徘徊(はいかい)や奇声などの行動につながることが多いことから、「住み慣れた地域で、顔なじみの人たちと一緒に過ごすことが不安解消となり、安心が症状の安定につながる」などと話し、「認知症と言う病気のイメージを変え、患者や家族が自立した生活を送れるよう、温かく見守ってほしい」などと呼び掛けた。

 同講座には市民ら約150人が出席。岡村芳和会長が「かかりつけの薬局、薬剤師を見つけ、一人ひとりの健康に役立ててほしい」などとあいさつ。奄美市認知症の人と家族と支援者の会「まーじんま」の会員らが活動内容などについて報告した。