日本島嶼学会沖永良部大会

「沖永良部島の成り立ち~人と島~」をテーマにパネルディスカッションが行われた日本島嶼学会沖永良部大会=22日、知名町=

 

「沖永良部島の成り立ち」考察
人類、地理、火山の専門家が講演

 

 【沖永良部】日本島嶼学会(可知直毅会長)の年次大会が22日、知名町フローラル館であった。「沖永良部島の成り立ち~人と島~」をテーマにシンポジウムを開催。人類学、地理学、火山地質学の専門家が講演し、奄美・沖縄地域に住む人の祖先や琉球弧の成り立ちについて考えた。

 大会は23日までの2日間。21日は事前プログラムとして、沖永良部高校での出前授業や、同学会の「島の医療を考える研究部会」主催による研究会があった。

 一般公開シンポジウムで鹿児島大学の高宮広土さんがリモートで基調講演し、人類学の視点から沖永良部人の起源を考察。奄美・沖縄諸島で見つかった土器や人骨、植物関係の遺物の調査結果から「8~12世紀に新しい集団がやってきて、現在の沖永良部人あるいは奄美・沖縄の祖先になったのではないか」と話した。

 関連講話では、地理学の専門でカルスト地形に詳しい琉球大学の羽田麻美さんが、カルスト地形を作る石灰岩の溶ける速度に関する野外実験の結果を報告。「沖永良部島を始め琉球弧の島々の石灰岩は溶けるのが早い」とし、その理由として溶食に伴って生成される、二酸化炭素や水分を多く含んだ土壌が影響しているとした。

 火山地質学の専門で鹿児島大学の井村隆介さんは「琉球弧と沖永良部島の成り立ち」について、これまで得られたデータをもとに解説。「旧石器時代は今より海面が120~150㍍低く、陸地はもっと広い。いま陸上にある遺跡だけで考えていいのか議論する必要がある」と提言した。

 講演した3人によるパネルディスカッションもあり、知名町の観光スポット「昇竜洞」の形成時期や沖永良部島にハブがいない理由について意見を交わした。

 このほか、一般研究報告が2日間にかけて行われ、離島の産業や文化、観光などをテーマに43組の研究者が登壇した。