ソテツ被害が急拡大

カイガラムシが付着、枯れるなど被害を受けた県大島支庁のソテツ

飛散による増殖懸念、対策呼び掛ける

飛散による増殖懸念、対策呼び掛ける
カイガラムシ

 奄美を代表する植物であるソテツの葉に、植物の害虫であるカイガラムシが寄生、枯れる被害が奄美市や龍郷町などで広がっている。被害にあったソテツは、緑の葉が白くカビが生えたように覆われ、黄色く変色、次第に枯れてしまう。県大島支庁林務水産課は「10月ごろから被害が広がっており詳細は調査中。急激な増殖、分布拡大が懸念される」とし、14日には、奄美群島の各市町村にも被害情報を発信、防除の際の飛散防止などを含めた対策を呼び掛けている。

 カイガラムシは、果樹や鑑賞樹などの害虫として知られており、葉や幹に多数付着、寄生し、汁を吸って植物を弱らせる。世界で約7300種が確認されている。今回、確認されたカイガラムシは体長2㍉(メス成虫殻)ほどで、同課の担当者は「詳しい種類については分かっていない。ソテツ以外での寄生は確認されておらず、外来種の可能性もある」としている。

 被害にあったソテツは、葉の根本から先端まで覆いつくすようにカイガラムシが付着、白くカビが生えたような状態になり、黄白色に変色。葉が枯れてもソテツ自体がすぐに枯死することはないが、被害が続くと全体が枯死する可能性もあるという。

 同課によると、以前からカイガラムシとみられるソテツの被害は確認されていたが、原因がカイガラムシであることが確認されたのは昨年秋ごろ。

 今年10月ごろからは、同市を中心に被害が拡大。現在、同市名瀬有屋町付近から大浜海岸周辺までの広い範囲で、県道沿いや公園、学校などに植栽されたソテツの葉が枯れるなどしているほか、龍郷町の東シナ海側の一部でも被害を確認。同市名瀬の県大島支庁玄関前に植栽されたソテツも被害にあっている。

 現在、奄美群島で被害が確認されているのは奄美大島のみだが、同課は「被害が急激に拡大している。風による飛散や人の衣服などに付着して運ばれ分布を拡大するため、早急な対応が必要」とし、群島の各市町村を通じて、事業所や住民らに情報を提供、警戒と対策を呼び掛けている。

 同課によると、対策としては、被害にあった葉は、切り落として焼却するかビニール袋などに入れてごみに出す。焼却施設などに運ぶ際も、飛散しないようビニール袋に入れるよう呼び掛けている。葉を切り落としたソテツには、カイガラムシが残っている可能性があるため、幹全体に薬剤を散布するなどの防除対策も求めている。

 また、被害が出た周辺のソテツについては、寄生場所を減らすため、健全な状態であっても冬のうちにせん定することを勧めており、せん定することで、新芽の季節に被害の早期発見にもつながるという。

 昨年秋に被害にいち早く気づき、行政などに報告した同市名瀬有屋町の内山初美さん(70)は、「ソテツは奄美を体表する植物で、被害が広がれば観光などにも影響する。もっと早く対応してほしかったが、これ以上被害が拡大しないようしっかりと対策してほしい」と話した。