瀬戸内町近代遺跡研究発表会

調査の写真などを交えながら発表する、鼎主査
身振り手振りを交えながら発表する、由良准教授

軍事遺跡活用に意義
「同じ過ちを繰り返さない」

「奄美大島 瀬戸内町の近代遺跡研究発表会~多様な視点から瀬戸内町の軍事遺跡をひもとく~」が23日、同町のきゅら島交流館で行われた。同町教委社会教育課の鼎=かなえ=丈太郎主査、防衛大学校防衛学教育学群統率・戦史教育室の由良富士雄准教授・2等空佐の研究発表に、参加者らが耳を傾けた。

開会で中村洋康教育長は「軍事遺跡など近代の遺跡は、身近な時代であるにもかかわらず、今まで知る機会が少なかった。島の歴史というだけでなく、平和を考える場としてほしい」とあいさつした。

同発表会は、同町の科学研究費助成事業(症例研究)の一環として、同町埋蔵文化財センター主催、町教委後援で開催された。

鼎主査の発表は「奄美大島に現存する軍事遺跡の考古学的研究」。①遺跡とは②考古学と埋蔵文化財とは③考古学的調査④最新技術調査⑤文献資料調査⑥遺構の比較⑦近代遺跡~奄美大島に軍事遺跡が多く残るわけ~⑧考古学的手法の有効性⑨今後の近代遺跡調査について―を発表。同町で206カ所の軍事施設跡が発見されていることや調査方法など、実際の画像を交えながら説明した。

由良准教授の発表は「明治以降の日本の海岸築城の歴史~奄美大島要塞を中心に~」。①海岸築城、堡塁=ほうるい=、砲台、要塞の言葉の解説②煉瓦=れんが=とコンクリートの折衷による築城、形態の標準化が進み始めた時期③煉瓦主体からコンクリート主体へ~規格化された堡塁、砲台へ④堡塁、砲台の生活(演習時)⑤明治30年代後期の堡塁、砲台⑥大正期以降の砲台~奄美大島要塞を念頭に~⑦奄美大島要塞の説明⑧第1次世界大戦以降の陸正面防禦=ぼうぎょ=⑨本土決戦準備⑩大陸での国境築城―を発表。設計図や写真、地図などを交え解説した。

質疑応答では、「行政的に軍事遺跡の保存などの具体的な動きは?」「なぜ、ウクライナの戦争は起きたのか?」などの質問があり、調査委員会で専門家の意見を聴取していること、ロシアは約80年の時を戻したかったといった回答がされた。

鼎主査は「軍事遺跡を残し活用することで、なぜ戦争が起きたのかを知り、同じ過ちを犯さないといったことを考える場になってほしい」と語った。

由良准教授は「実情を知らなければ同じ過ちを繰り返す。負の遺産を直視し次に役立てることが必要。平和という頂=いただき=を目指すには、いろいろなルートがあるはず」と話した。

古仁屋高校の日本史と世界史の教諭と参加した、中村恵実さん(3年)は「奄美に住んでいて、遺跡に興味はあったが学ぶ機会がなく、先生にお願いし申し込んでもらった。いろいろな話が聞けて良かった」と喜んだ。

日本史の立神諭史教諭(49)は「考古学が専門なので興味深い話が聞けた。今後の授業での取り扱いに生かしていきたい」と話した。