「全国山羊サミット奄美大会」

島外から多くのヤギ愛好家らが参加した全国山羊サミット奄美大会(市民交流センター)

ヤギ料理などが振舞われた交流会(山羊島ホテル)

「在来種は絶滅の危機」
山羊文化とノヤギ問題など報告
基調講演や事例報告、交流会

「第22回全国山羊サミット奄美大会」(同実行委員会、全国山羊ネットワーク主催)が26日、奄美大島で開幕した。同日は奄美市名瀬の市民交流センターで基調講演や事例報告などが行われ、鹿児島大学名誉教授の萬田正治名氏が南西諸島の人々の生活や食文化に欠かすことができない山羊の生態などを紹介したほか、環境省奄美野生生物保護センターの阿部慎太郎所長が、野生化したノヤギ対策が求められている奄美の自然環境の現状などを報告した。大会は26日まであり、「世界自然遺産の中の山羊たち」を大会テーマに様々な交流が行われる。

同サミットの開催は2019年(山梨県)以来3年ぶり。毎回、全国各地からヤギ愛好家らが参加しており、今回も島外から100人を超える愛好家らが来島、26日の基調講演には約150人が出席した。県大島支庁の新川康枝支庁長や安田壮平奄美市長らも来賓として祝辞を述べた。

基調講演では萬田氏が「南西諸島の暮らしと山羊」と題し、かつて南西諸島の重要な家畜であったヤギが、近年は飼育頭数も減り、食文化も停滞している現状に警鐘を鳴らした。また、外来種の導入によってトカラヤギなどの在来種が絶滅の危機に陥っていることや、世界的にはヤギの飼育頭数が増加傾向にあるるとし、「農業用家畜だけでなく自給用家畜としてヤギを飼育することで、ヤギが国民的家畜となることを期待している」など述べた。

野生生物保護センターの阿部所長は「奄美大島の希少野生生物と外来種問題」について講演。マングースやノネコ同様にノヤギが奄美の生態系に大きな影響を及ぼしている現状を報告。海上からの目視調査で21年に642頭のノヤギが確認されるなど、生息数が徐々に増加してことを憂慮。「ノヤギを放置すればさらに大きな問題になる。管理ができないヤギは島内から根絶する必要がある」などと話し、捕獲強化などの対策を求めた。

このほか、龍郷町でヤギを飼育、乳製品などの商品化に取り組んでいる「それいゆふぁーむ」の勝島利美代表や喜界高校2年、渕脇成さんら5人がヤギの飼育や活用法などに事例報告を行った。

同日夜には同市名瀬の山羊島ホテルで交流会があり、参加者らが交流。ヤギ料理などが提供されたほか、シマ唄などで奄美の文化を楽しんだ。

実行委員長の有村修一・奄美大島商工会議所会頭は「ヤギは奄美の食文化に欠かせない生き物。ヤギを愛する多くの人に奄美の山羊文化を知ってもらう機会ができて良かった」と話した。

27日には、それいゆふぁーむで、ヤギの飼育管理に関する研修会を行い、家畜としてのヤギの魅力を発信する。