研究拠点のある瀬戸内町の鎌田町長
東京大学大気海洋研究所(千葉県柏市)は2日、亜熱帯・KUROSHIO研究教育拠点の形成と展開事業 キックオフシンポジウム「研究拠点の夢を語る」を奄美市名瀬の市民交流センターマチナカホール及びオンラインで開催した。大学教授や行政の首長、教育関係者など29人が登壇。研究成果や行政の取り組み、同教育拠点に期待することなどを講話。会場及びオンラインで参加した70人以上が視聴した。
同研究所は、2021年度から瀬戸内町須手の東大医科学研究所奄美病害動物研究施設内に、研究拠点の準備を進め、今年7月から津波の高さなどに影響を及ぼし、海洋生物の生息や海流研究の基盤となる海底地形の調査など、研究を本格化している。また奄美群島内の高校と連携し、生徒が取り組む探究活動へのアドバイスや授業を行う「海と希望の学校in奄美」を実施している。
講話は、第1部「大学の立場から」、第2部「奄美に研究拠点を置く意義」、第3部「高等教育と初等中等教育をつなぐ施設としての奄美拠点」、第4部「行政の立場から亜熱帯・KUROSHIO研究教育拠点に期待すること」の4部構成で行われた。
第1部では、東京大学大気海洋研究所の津田敦教授や河村知彦所長などが、地域との連携の重要性や「海と希望の学校in奄美」の展開と継続などについて語った。鹿児島大学国際島嶼教育研究センターの高宮広土センター長は、研究成果を地域に還元することにより、奄美の自然の豊かさなどを再認識し、ローカルアイデンティティーが芽生えていると話した。
第2部では、九州大学浅海底フロンティア研究センターの菅浩伸センター長による「浅海底の高解像度マルチビーム測深を基にした学際研究展開」や琉球大学理学部・熱帯生物圏研究センターの藤田和彦教授による「琉球(沖縄)から見た奄美群島研究拠点の意義」など、8人が登壇し講話した。
第3部では、大島高校の黒木哲二校長による「大高コンソーシアム構想~地域協働による奄美に貢献できる人材育成~」や同研究所の平林頌子講師による「海と希望の学校in奄美の開講にむけて」などの講話があった。最後に同研究所が行ったサイエンスキャンプに参加した、与論高校の生徒6人がZoomで参加し、「大学で学ぶ内容や将来の職業選択などの幅が広がった」など活動記録を報告した。
第4部では、奄美群島市町村の首長などが登壇。行政による取り組みや同教育拠点に期待することなどについて講話。同研究拠点の所在地となる瀬戸内町の鎌田愛人町長は「瀬戸内町を拠点に、地球環境に関する研究が行われることに期待する。できる限り連携を図る」とし、奄美市の安田壮平市長は「民間の目線からの意見をあげてもらい、行政として取り組めるものから積極的に取り組んでいきたい」と話した。
同研究所の横山祐典教授は「いろいろな角度から多くの取り組みが行われていることを知れて楽しかった。教育、研究、協働できることは多くあると感じた」と1日目を終えた感想を語った。
3日午前9時~正午、亜熱帯・KUROSHIO研究教育拠点の形成と展開事業普及講演会「セカイとつながる奄美~島嶼域における環境学研究」を同会場及びオンラインで開催する。