天城町長選ふり返る

1期目の実績で築いた厚い支持基盤をアピールした天城町長・町議同時選の森田氏陣営出陣式=11月29日

「暮らし満足度ナンバーワンのまちへ」
穏やか選挙に様変わり

任期満了に伴う天城町長選挙(町議選同時執行)は4日に投開票され、2期目続投による「住んでよかった。暮らし満足度ナンバーワンのまち」づくりへ主要施策を掲げて支持を求めた現職の森田弘光氏(72)=松原=が、新人でフリーアナウンサーの髙英子氏(52)=与名間=を1293票の大差で寄り切って信任を得た。「あまぎ自然と伝統文化体験館」(ドーム型闘牛場)建設〝優先度〟の問題のほかに大きな争点はなかった。一騎打ち激戦で対立を深めた前回選から一転した穏やかな選挙戦をふり返った。(同選取材班)
 
 ◆選挙戦対立の構図

任期満了(12月26日)に伴う同町長選に向けては、1期目現職の森田氏がまず今年3月定例町議会で「住んでよかった。暮らし満足度ナンバーワンのまちづくりへ道半ば。残された課題を一つ一つ解決に努力したい」。コロナ終息に向けた厳しさも予想されるなか、「町民みんながさらに安心して住みやすい、誰もが住んで良かったと実感できる町づくり。引き続き町政の舵取り役の重責を果たしたい」と明確に表明していた。

同町内の建設関連業者約30社のうち「9割以上が現職を支持」。盤石な支持基盤の上に、定数14の町議会も前回選以降、町長選派閥にみる議員らの離合集散も進み、15人が立候補した今回の町議選は森田氏派が10人(結果的に全員当選)に拡大。無風状態のまま「無投票」観測が支配しつつあった。

そのただ中、新人の髙氏が立候補表明(会見)したのは10月中旬のこと。天城町ユイの里テレビ(AYT)をはじめFM沖縄、青森テレビなど各局アナウンサー、那覇市公共施設の館長、日本一周の旅などの見聞を通じ、「わが町(天城町)には元気がない。女性や若者の視点を生かし、自らの行動で町を変えたい」とアピール。後援会など支持組織もあえて作らず、選挙活動資金も「私自身の貯金のみ」で〝孤軍奮闘〟する形で打って出た。現職の厚い壁の前に「ミラクル」は起こせなかったが、選挙期間中に「一発屋では終わらせない」とも示唆していた。
 
 ◆ドーム型闘牛場の優先度
 
争点となった「あまぎ自然と伝統文化体験館」は、町総合運動公園隣接地(同町浅間)に2025年度完成を目指している大型事業。森田氏の1期目選挙公約の目玉の一つだ。町当局によると建設規模は屋内闘牛場(2190席・立ち見含め定員3040人収容)などを中心に延べ床面積が2490・7平方メートル。現段階の総事業費見込みは約10億9千万円(企画財政課)だが、一部では「11億~13億円に膨れ上がる」との指摘も。同町議会は10月末に同建設への実質着工ともいえる基礎杭(くい)工事請負契約案を賛成多数で可決。年内にも着工見込みという。

髙氏は、選挙戦で同館建設に関し「必要ではあるだろうが、飼料・肥料などの農業資材、食料品などの高騰で厳しい生活・経済状況が続くなか、今、造るべきではない」と指摘。対して森田氏ら陣営側は「国庫補助(奄振予算)は決定済み。延期や中断は国との信頼関係にも影響する。世界自然遺産登録が実現した中、闘牛をはじめ伝統文化の発信、農産物の販売や若人のイベント開催など〝稼げる施設〟は必要」と主張。2期目当選から一夜明けた5日、森田氏は「私にとっては争点とは思わない」とも。

選挙手法や他の公約は異にしようが有権者の審判は下った。森田氏は町役場職員、副町長、町長1期に携わり行政ひとすじ46年。ぶれることのないより真価ある「住んでよかった。暮らし満足度ナンバーワンのまちづくり」。町議会、町民一丸の「ワンチーム」となった町づくりの手腕に期待したい。