早朝の気温の低下によってリュウキュウアサギマダラの集団による冬越しの様子が観察された
7日の奄美地方は久しぶりに晴れ間が広がったこともあり、放射冷却によって早朝の気温が今季最低となる所もあった。気温の低下で奄美大島北部の森では、リュウキュウアサギマダラが集団で羽を寄せ合い寒さをしのぐ様子が見られ、冬の訪れを告げている。
気象庁によると、この日、日中の最低気温が今季最低となったのは古仁屋(12・4度)と伊仙(14・3度)。奄美地方の観測地で最も低かった古仁屋は平年差3・0度、前日差1・8度下回った。「晴れと放射冷却のほか、北東の風により山から冷たい空気が流れ込んだため気温が低下した」(名瀬測候所)。青空が広がったが、晴天は11月28日の曇りのち晴れ以来という。
北部の笠利(15・5度)や名瀬(15・6度)は15度台の最低気温となった。気温が15度あたりまで下がると観察できるのが、「奄美の冬の風物詩」とも言えるリュウキュウアサギマダラの冬越し。奄美大島以南の南西諸島に分布するタテハチョウ科のチョウで、枯れ枝にぶら下がり羽を寄せ、越冬する。ブルーと茶色のまだら模様が美しく、気温が上昇すると眠りから覚めたかのように羽を広げ、ブルーの色彩は宝石のように輝く。
幻想的な冬越しが観察されたのは集落近くにある小高い森林内。樹木が覆いかぶさっているため薄暗く、北からの季節風が吹きつける時でも風が通り抜けることはない。毎年観察している集落民は「12月に入り気温が低下するようになったことでパラパラと見え始めた。観察地の上部にはリュウキュウアサギマダラの吸蜜植物であるヤマヒヨドリバナの群生地があり、気温が高い昼間はたくさん群がっている。草刈りされず残ることで、集団越冬の貴重な観察環境が保たれているのではないか。ヤマヒヨドリバナを残す取り組みが広がってほしい」と語った。