大和村 アマミクロウサギシンポジウム

各専門分野の見地から「アマミノクロウサギ」が語られた(10日、大和村防災センター)

2025年度開館予定のアマミノクロウサギ研究飼育施設(仮称)の完成予想図(大和村提供)

保護対策や保全理解
研究施設の機能報告も

 アマミノクロウサギ研究飼育施設(仮称)の整備を進める大和村は10日、村防災センターで「世界自然遺産登録1周年記念 アマミノクロウサギシンポジウム~世界自然遺産登録その先へ~」を開催した。伊集院幼村長、村職員他、住民ら約60人が参加。同施設の概要が説明されたほか、有識者らによる講演、ディスカッションを通し生態や保護対策、今後の保全の取り組み方などについて理解を深めた。

 同シンポジウムは、村企画観光課、(一社)自治総合センターが主催。クロウサギについて各専門分野の立場から出された情報、意見を元に、保護対策のあり方を検討するとともに同施設の役割を明確にし、普及啓発することが目的。

 開催にあたり同課は、2025年度開館予定の同施設のパース図(完成予想図)を公開。①治療・リハビリ②生態研究③自然環境の保全④環境教育の実施⑤研究者の支援―の五つの機能が整備されると報告された。

 講演で、奄美群島国立公園管理事務所の鈴木真理子さん(41)は、生態を知る手掛かりとなる「巣穴」など調査内容を説明。また、外来種駆除などにより生息数が増加傾向も、生息域の拡大によるロードキル(交通事故)、農業被害など課題を報告。同村マテリヤ線沿いに張られた防獣ネットなど取り組みなどを紹介した。

 沖縄大学客員教授の山田文雄さん(69)は、生物学的見地から保全を考察。ウサギ類全般を説明し、クロウサギの希少性を解説。自然の理解を深め、保全策を確立するなど「生態系を基軸とした社会の実現」が必要とした。

 他にも講演では、鹿児島大学准教授の髙山耕二さん(52)が農業被害の現状と侵入防止柵など対策事例を報告。鹿児島市平川動物公園学芸員の落合晋作さん(40)は傷病保護と飼育について、東京農工大学教授・獣医師の田中あかねさん(62)は細胞分析によるクロウサギの視力、視野などを解説。奄美市名瀬の写真家・浜田太さん(69)は、巣穴の前で撮られたクロウサギの親子の様子など映像を紹介した。

 パネルディスカッションでは、各講話の振り返りとともに、同施設への展望について意見が交わされたほか、来場者との質疑応答が行われた。