アマミノクロウサギ大幅増

アマミクロウサギの最新の推定個体数が報告された検討会(16日、奄美市名瀬・市民交流センター)

アマミノクロウサギ

推定生息数、最大約4万匹 希少野生生物保護検討会
ロードキルなど新たな課題への指摘も

2022年度奄美野生生物保護増殖検討会(座長・石井信夫東京女子大学名誉教授、委員6人)が16日、奄美市名瀬の市民交流センターであった。会では、21年度のアマミノクロウサギの推定生息数(速報値)が、奄美大島1万0024~3万4427匹、徳之島1525~4735匹と報告。それまで環境省が最新としてきた、03年度の奄美大島2千~4800匹、徳之島100~200匹(ともに推定)を大幅に上回り、最大値で比較すると約20年間で奄美大島が約5倍、徳之島が約15~20倍強増加。マングースの捕獲、ノネコ対策など保護事業の成果とする一方、さらなる増加が懸念されるロードキル問題、農業被害に対する意見があった。

同省は、種の保存法に基づき奄美群島で、国内希少種に指定されているアマミノクロウサギ・アマミヤマシギ・オオトラツグミの3種の保護増殖事業の10カ年実施計画(14~23年度)を策定。検討会では同事業の実施状況など各施策を報告。各関係機関からオンラインの参加者含む約50人が出席した。

今回集計された推定生息数は、これまで同事業で行われてきた各モニタリング調査、マングース防除事業で行われた自動撮影カメラによるデータなどと、20、21年度の冬季に実施された「REST法」(生息密度を推測)を用いて算出した。

生息数が増加した主な理由として、奄美大島が00年度に開始されたマングース捕獲事業、徳之島が14年以降実施のノネコ対策で、他には森林の大規模伐採の減少が挙げられた。

座長を務めた石井名誉教授(70)は「今後は、世界自然遺産登録地以外の場所で新たな問題が起きる可能性や、昆虫など3種以外の生き物への注視が必要。生態系全体の保全に対する取り組みが大事となる」など今後の課題を挙げた。